ミジンコ目

ミジンコ目（ミジンコもく）

ミジンコ目は、甲殻亜門 鰓脚綱に属する節足動物の一群であり、枝角亜目とも呼ばれます。主に水中のプランクトンとして生活する微小な甲殻類で、その生態や形態は多様性に富んでいます。

概説

ミジンコ目は、水生生態系において重要な役割を担うプランクトンです。体長は通常0.5〜3mm程度で、丸みを帯びた体が特徴的です。第二触角が大きく発達しており、これを動かして水中を移動します。その知名度は高く、プランクトンの代表例として教科書や図鑑で紹介されることが一般的です。中には、オオミジンコのように5mmに達するものや、捕食性のノロのように10mmに達するものも存在します。

形態

大部分のミジンコは小型で、体長数mm程度です。体は左右に扁平で、二枚貝のような背甲に覆われています。単脚下目（ノロミジンコなど）は細長い体を持ち、18mmに達するものもいます。

単脚目以外のミジンコは、背甲の中に胴部（胸部と腹部）が覆われています。頭部のみが背甲から露出し、胴部は分節が不明瞭です。胸肢がある部分を胸部、それより下を腹部と呼びます。頭部が小さく胴が丸い形状は、まるでだるまのようです。

頭部には、ノープリウス眼由来の単眼と大きな複眼があります。複眼は左右のものが融合してドーム状になり、正中線上に単眼と複眼が並びます。頭部はヘルメット状の甲で覆われることがあり、その先端部は尖って吻となります。口は頭部と胸部の境目の腹側に開きます。第一触角はごく短いですが、雄では雌を掴むための器官として発達するものもいます。第二触角は大きく発達し、二股に分かれており、それぞれに生えた毛を使って泳ぎます。

胸部以降の体は背甲に覆われ、体節は不明瞭です。5対ほどの胸脚は鰓状で、呼吸と水中の微粒子を口に運ぶ役割を担います。腹部の末端は前方に曲がり、尾爪という爪のようなものが付いています。少し上の背面には、一対の長い毛が生えています。背甲は腹面で分かれており、腹部の背面との隙間が育房となり、卵が孵化するまで保護されます。育房のすぐ頭部側の胸部背面で背甲は虫体と接続し、ここに心臓が見えます。心臓はありますが血管はなく、血液が全身を直接巡っています（開放血管系）。

生活史

ミジンコ類は、単為生殖を行うものが多く知られています。これらのミジンコは、減数分裂を経ずに卵を形成し、すべてが雌となります。卵から孵化したものは、成虫とほぼ同じ形をしており、直接発生を行います。好適な条件下では非常に素早く増殖し、大発生することもあります。

環境条件が悪化したり、密度が上がりすぎたりすると、減数分裂によって卵が作られ、同時に雄が生まれます。雄は雌と交接し、受精が行われると、卵は耐久卵となります。耐久卵は乾燥にも耐え、条件が良くなると孵化します。

ノロでは、孵化した幼生はノープリウスです。

生息環境

ミジンコのほとんどは淡水に生息しています。大きな湖から小さな水たまり、高層湿原から富栄養な水たまりまで、様々な環境で見られます。生息する種は環境によって異なります。游泳力は強くないため、流水域に生息するものはあまりいません。海産種は非常に少なく、ウスカワミジンコ属、ウミオオメミジンコ科の計8種のみです。

ミジンコ類は大部分がプランクトンですが、一部は底や水草の表面に付着して生活します。水底や泥の間を這うように泳ぐ種もいます。これらの種はプランクトンネットでは採集されません。移動は主に第二触角による遊泳によって行われます。

餌は水中の微粒子（デトリタス）を鰓で作った水流によって集めて食べます。飼育下ではドライイーストなどが用いられます。オオメミジンコとノロは、より小さい動物を捕食します。これらの種は、胸脚が鰓状ではなく、しっかりとした脚の形になっています。

人間との関わり

ミジンコは、金魚や熱帯魚の餌としてよく使われます。特に金魚の稚魚の餌としては欠かせません。金魚養殖業者は、ミジンコの養殖を行うこともあります。金魚繁殖の手引き書には、ミジンコの養殖法が解説されていることもあります。乾燥させたミジンコも餌として用いられます。

また、ミジンコは手頃な大きさで観察が容易なため、理科の教材や顕微鏡観察の材料としても適しています。体が小さくて透明であるため、心臓や血球、筋肉などを生きたまま観察できます。メチニコフは、食細胞の発見に際してミジンコの血球を観察しました。彼は、ミジンコの体内に寄生する酵母であるメチニコービアの胞子が、ミジンコの体内で特定の細胞に取り込まれて殺される様子を観察しました。

分類

現生種は11科600種が知られています。大きくは4つの群（下目）に分けられます。最も種類が多いのは異脚下目です。

櫛脚下目 Ctenopoda
異脚下目 Anomopoda
鉤脚下目 Onychopoda
単脚下目 Haplopoda

その他

ミュージシャンの坂田明は、広島大学生物生産学部生物海洋学研究室を卒業し、ミジンコの研究者としても知られています。

マギレミジンコは、近くに天敵がいると頭が尖ることがあります。

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