ニシオンデンザメ

ニシオンデンザメ（西隠田鮫）

ニシオンデンザメ（学名: Somniosus microcephalus、英名: Greenland shark）は、オンデンザメ科に属する大型のサメです。その名の通り、グリーンランド近海を含む北大西洋の冷たい海域に生息しており、ツノザメ目の中では最大種に分類されます。

生息域

ニシオンデンザメは、北大西洋全域の沿岸から沖合にかけて広範囲に分布しています。特にグリーンランド周辺の海域でよく見られ、水温の低い海域であれば、浅い場所にも姿を現すことがあります。深海に生息するイメージが強いですが、エサを求めて浅瀬や河口付近まで行動範囲を広げることもあります。

特徴

形態

ニシオンデンザメは、最大で体長7.3メートルにも達する大型のサメです。体色は灰色で、ずんぐりとした体型が特徴です。近縁種のオンデンザメに似ていますが、ニシオンデンザメの方がより太く、横幅があります。鰭と目は体の大きさに比べて小さく、目には寄生性のカイアシ類が付着していることがよくあります。顎の歯は、上顎の歯がやや突き出ており、下顎の歯はやや小さくなっています。吻部はやや前方に突き出ています。

オンデンザメとの識別点

オンデンザメとは非常によく似ていますが、背鰭の位置で区別できます。ニシオンデンザメは、第一背鰭と第二背鰭の間の長さが、吻端から第一鰓孔までの長さとほぼ同じです。一方、オンデンザメは、その長さが吻端から第一鰓孔までの長さの三分の二程度です。

驚異的な寿命

ニシオンデンザメは、既知の脊椎動物の中で最も長寿な動物の一つです。放射性炭素年代測定法によって、推定年齢が392歳（272歳から512歳の間）に達する個体も確認されています。メスの性成熟には約150年かかると推定されており、その成長の遅さが長寿につながっていると考えられています。

生態

泳ぎ

ニシオンデンザメは、そのずんぐりとした体型と小さな鰭のため、泳ぐ速度は非常に遅く、時速1km程度です。これは大型魚類の中でも極端に遅く、「世界一のろい魚」とも呼ばれます。これは、低温域に生息しているため筋収縮速度が遅いためです。

食性

動きは遅いものの、食性は非常に貪欲で、サケやマスなどの魚類、底生性動物など多様なものを捕食します。大型の個体になると、アザラシも襲うようになります。胃の内容物からは、トナカイやホッキョクグマの骨が見つかることもあります。しかし、これらの骨は、死んだ動物の死骸を食べていた可能性も指摘されています。また、船員の長靴や人間の遺体が見つかった例もあります。動きが遅いため、積極的に獲物を追うのではなく、待ち伏せや不意打ちといった方法で狩りをすると考えられています。

人間との関わり

ニシオンデンザメは、その巨体と貪欲な食性から、潜在的に危険なサメとされますが、生息域が人間の泳ぐには適さない低温海域のため、直接的な被害は報告されていません。

食用と利用

ニシオンデンザメの肉にはトリメチルアミン-N-オキシドという毒素が含まれているため、調理する際には毒抜きが必要です。肝臓は肝油などに利用され、アイスランドでは発酵食品ハカール（Hákarl）の材料として利用されています。北極海周辺では、年間約3万匹が捕獲されています。

北方系原住民による利用

北方系原住民の人々は、古くからニシオンデンザメを利用していました。氷の下に丈夫なロープで疑似餌を仕掛け、誘い出されたサメを捕獲していました。

まとめ

ニシオンデンザメは、その驚異的な寿命や独特の生態から、非常に興味深いサメです。動きは遅いものの、多様な食性を持ち、深海から浅海まで幅広い範囲で活動します。人間との直接的な関わりは少ないですが、その生態はまだまだ解明されていない部分も多く、今後の研究が期待されます。

脚注

• - FishBase‐ニシオンデンザメ（英語）

関連項目

• - サメ
• - 軟骨魚類
• - 魚の一覧

もう一度検索