ニール・パート

ニール・パート：伝説のドラマー、その音楽と人生

ニール・エルウッド・パート（Neil Ellwood Peart）は、1952年9月12日カナダ生まれ。2020年1月7日に惜しまれつつこの世を去った、伝説的なミュージシャン、作詞家です。彼は、ハードロック/プログレッシブ・ロックバンド「ラッシュ」のドラマーとして世界的に知られています。その革新的なドラムプレイは、数多くのプロ・ドラマーに多大な影響を与えました。

音楽的特徴

パートの最大の特徴は、水平方向360度にセットされた多点ドラムセットと、手数の多いパワフルなドラミング、そして緻密に構成されたドラム・ソロです。彼のドラムソロは、単なる休憩時間ではなく、ライブの大きな見せ場として観客を魅了しました。アコースティックドラムに加え、MIDIパーカッションなども組み込み、ロックのみならず、ジャズ、ドラム・コー、アフリカ音楽、ラテンなど、多様な音楽スタイルを巧みに取り入れています。

影響を受けたミュージシャンとして、ザ・フーのキース・ムーン、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム、キング・クリムゾンのマイケル・ジャイルズ、クリームのジンジャー・ベイカー、ジェネシスのフィル・コリンズなどが挙げられます。また、ジャズ界のバディ・リッチからも多大な影響を受け、トリビュート・アルバムのプロデュースやメモリアル・コンサートへの参加も行いました。

使用機材

ラッシュ加入当初はスリンガーランドのドラムセットを使用していましたが、後にTAMA、ラディックへと変更。1996年からはDW社とエンドースメント契約を結びました。シンバルはセイビアンと契約し、自身のシグネチャーモデル"Paragon"を共同開発しました。スティックはプロ・マーク社製を愛用。非常に点数の多い巨大なドラムセットを使用し、2002年からはローランドの電子ドラム「V-Drums」を背面に配置した「360°セット」も登場しました。

作詞家として

パートは、ラッシュの楽曲のほとんど全ての作詞を手がけました。文学的な言葉の流れを用いて、社会風刺や近未来への警告、都市・自然の風景描写、人間の内的葛藤など、幅広いテーマを扱った独持の詩世界を構築。その難解さから批判を受けることもありましたが、海外では彼の詞が研究され、書籍も刊行されています。

悲劇と再生

私生活では、愛娘と妻を相次いで失うという悲劇に見舞われ、一時活動を休止。しかし、セラピーを受け、新たな伴侶を得て復帰しました。また、BMWのバイクでの一人旅を好んでいました。

引退と死

腱鞘炎の悪化により2015年頃から一線を退き、2018年に引退。2020年1月7日、膠芽腫のため67歳で逝去しました。

功績

ニール・パートは、1983年に『モダン・ドラマー』誌の読者人気投票で殿堂入りを果たしました。その他、『ローリング・ストーン』誌や『リズム・マガジン』誌など、数々のメディアで「史上最高のドラマー」として高く評価されています。1996年には、バンド・メンバーと共にカナダ勲章を受勲しました。

映像作品と著作

教則DVDやライブ・パフォーマンスの映像作品に加え、6冊の著作も残しています。

教則DVD
A Work in Progress（1996年）
Anatomy of a Drum Solo（2005年）
ライブ・パフォーマンス
Taking Center Stage: Lifetime of Live Performances（2011年）
著作
The Masked Rider: Cycling in West Africa (1996年)
Ghost Rider: Travels on the Healing Road (2002年)
Traveling Music: The Soundtrack to My Life and Times (2004年)
Roadshow: Landscape With Drums, A Concert Tour by Motorcycle (2006年)
Far and Away: A Prize Every Time (2011年)
Far and Near: On Days Like These (2014年)

ニール・パートは、その革新的なドラムプレイと深遠な歌詞、そして波乱万丈な人生を通して、多くの人々に感動と影響を与え続けました。彼の音楽と精神は、これからも永遠に生き続けるでしょう。

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