ヌーヴォー・レアリスム

ヌーヴォー・レアリスムとは



ヌーヴォー・レアリスム（Nouveau Réalisme）は、1960年に美術評論家ピエール・レスタニと芸術家イヴ・クラインによってフランスで結成された芸術家グループ、およびその芸術運動を指します。第二次世界大戦後の工業化社会における新しい現実を、美術を通して表現しようとする試みでした。ピエール・レスタニは、1950年代のアンフォルメルなどの絵画運動に満足できず、大量生産品や消費後の廃棄物を用いた作品制作に共感する作家たちと共に、この運動を立ち上げました。

ヌーヴォー・レアリスムの誕生と終焉



1960年4月、レスタニはミラノのアポリネール・ギャラリーでグループの宣言文を発表。同年10月27日には、9人の作家による共同宣言が行われました。初期メンバーには、レイモン・アンス、アルマン、ジャック・ド＝ラ＝ヴィルグレ、イヴ・クライン、ダニエル・スペーリ、ジャン・ティンゲリー、フランソワ・デュフレンヌ、マルシャル・レイス、そしてピエール・レスタニが名を連ねます。その後、セザール、ミンモ・ロテッラ、ニキ・ド・サン・ファル、ジェラール・デシャン、クリストなどが加わりました。

1960年11月にはパリで最初の展覧会が開催され、その後も国内外で展覧会を行いましたが、1963年のサンマリノ・ビエンナーレを最後にグループとしての活動は終了しました。1970年には結成10周年を記念した展覧会も行われましたが、イヴ・クラインの急逝後、グループとしての結束を維持することが難しくなり、各作家は個々の活動へと移行していきました。

ヌーヴォー・レアリスムの理念と手法



ヌーヴォー・レアリスムのメンバーは、世界を「部分を取り出して作品にできるイメージ」として捉え、生活と芸術の融合を目指しました。「集合的な単独/特異（collective singularity）」という概念を掲げ、個々の作家が異なりながらも、共に活動することを宣言しました。

彼らの手法は多岐にわたりました。イヴ・クラインはモノクローム絵画やパフォーマンス、アルマンは廃品の集積、セザールは廃車の圧縮、ド＝ラ＝ヴィルグレは破れたポスターのコラージュ、スペーリは食卓の残滓をそのまま展示、ティンゲリーは廃材を用いた機械作品を制作しました。これらの作品の根底には、日常生活や廃棄物からリアリティを直接「盗用」するという共通の認識がありました。ピエール・レスタニは、この手法を「都市や産業社会、広告の中にある現実を詩的にリサイクルする」と表現しました。

同時代の美術運動との比較



ヌーヴォー・レアリスムは、大量生産された商品を批判的に用いる点から、アメリカのポップアートと比較されることがあります。しかし、ジャンクアートやレディメイドといった手法や理論において、ネオダダとの関連性がより強いと言えます。どちらの運動も、環境に溢れる廃棄物を新たな自然と捉え、そこにリアリティを見出そうとする「工業化社会の自然主義」的な側面を持っていました。

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