ネイピア＝ヘストン レーサー

ネイピア＝ヘストン レーサーの概要

ネイピア＝ヘストン レーサー、またはヘストン 5型 レーサーと称されるこの航空機は、1940年代における英国の低翼単葉機です。世界速度記録の樹立を目指して企画されたこの機体は、ネイピア・アンド・サンとヘストン航空機社の共同プロジェクトの成果であり、ロバート・モーリスやナフィールド子爵の支援を受けて開発されました。

設計と開発

設計を担当したのは、ネイピア・アンド・サンのアーサー・E・ハグとヘストン航空機のジョージ・コーンウォールです。彼らが着手したのは、シンプルでありながら機能的な性能を持つ単発、低翼の片持ち式単葉機でした。この機体は、迅速な生産が可能で、また極めて滑らかな仕上げを特徴としており、その大部分が木材で作られています。

特に、翼には高い空力効率を確保するために、非常に薄くて細長い翼型が採用されました。また、全ての動翼は特殊な歯車を介してスムーズに操作され、操縦性が向上しています。さらに、可変リンケージシステム「qフィール」が搭載されており、操作者が異なる速度条件に応じて昇降舵の感覚を調整することができるようになっています。

搭載予定のエンジンは、未テストの2,450 hpを発生するネイピア セイバー エンジンです。特に改良が施されたこのエンジンは、最大で4,000 hpを生み出す可能性があるとされていましたが、公式には認可されていませんでした。結果として、ナフィールド子爵の資金援助のもとでのプライベートなプロジェクトとして進行しました。

運用の歴史

ネイピア＝ヘストン レーサーの初飛行は、1940年6月12日に行われました。この機体のコールサイン「フォックス・オーボ・キング」を持つG-AFOKは、ヘストン航空のテストパイロット、G.L.G. リッチモンド少佐が操縦しました。離陸試験中、想定外の暴風に見舞われ、大きく弾みながら空中に舞い上がりました。

試験飛行では、エンジンがオーバーヒートを起こし、エンジニアが急いで降着装置を出したものの、高度30フィートで機体が失速してしまいました。この結果、機体は地面に激しく衝突し、尾翼が破損するという結果となりました。この事故により、1938年に発注された2機のうちの一機が失われ、残るG-AFOLの製造も80%進んでいたにもかかわらず、計画は中止を余儀なくされました。

仕様概要

• - 乗員: 1名
• - 全長: 7.50 m
• - 全幅: 9.766 m
• - 全高: 3.61 m
• - 翼面積: 15.57 m²
• - 全備重量: 3,266 kg
• - エンジン: ネイピア セイバー レシプロエンジン 1基（2,450 hp）
• - 最大速度: 837 km/h（計算値）
• - 航続時間: 18分

この種の機体は、航空史において特異な存在であり、同時代の他機と比較してもそのデザインや技術は今なお注目されます。ネイピア＝ヘストン レーサーは、航空技術の進化を象徴する一機として記憶され続けることでしょう。

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