ノハナショウブ

ノハナショウブ（野花菖蒲）について

ノハナショウブ（学名: Iris ensata var. spontanea）は、アヤメ科アヤメ属に分類される多年草です。園芸種として知られるハナショウブ（花菖蒲、I. ensata var. ensata）の原種にあたり、自然の状態で生育する野生種です。

形態と生態

ノハナショウブは、40cmから100cm程度の高さに成長する花茎を持ちます。葉は剣のような形をしており、縁は滑らかです。花期は6月から7月にかけてで、赤紫色の花びらを広げ、その基部には特徴的な黄色の筋模様が現れます。同じアヤメ属の植物であるアヤメやカキツバタと見分けるポイントとして、アヤメの花びらには網目模様が、カキツバタには白色から淡黄色の筋が入る点が挙げられます。これらの特徴を比較することで、ノハナショウブの独自性を認識できます。

分布と生育環境

ノハナショウブは、日本国内では北海道から九州にかけて、また、国外では中国や朝鮮半島といった東アジア地域に分布しています。生育環境としては、湿地、湿原、湿った草原などが挙げられ、水辺に近い環境を好む性質があります。これらの場所で、ノハナショウブは他の植物と共に豊かな生態系を形成しています。

人間との関わり

ノハナショウブは、その美しい姿から、過去には切手の意匠にも採用されています。1994年に発売された420円普通切手にその姿が描かれ、2014年まで販売されていました。このことは、ノハナショウブが広く一般に認知され、親しまれていた証と言えるでしょう。また、ノハナショウブの自生地は、自然保護の観点からも重要視されています。

国指定文化財

日本国内では、以下の場所にあるノハナショウブの群生地が、国の天然記念物として指定されています。これらの場所は、学術的にも貴重な自生地として保護されています。指定名称は「ハナショウブ」となっていますが、実際には原種のノハナショウブの自生地です。

花輪堤ハナショウブ群落（岩手県花巻市）
斎宮のハナショウブ群落（三重県多気郡明和町）
栗野町ハナショウブ自生南限地帯（鹿児島県姶良郡湧水町）

これらの場所は、ノハナショウブの生育環境を保護するとともに、その美しさを後世に伝えるための重要な拠点となっています。

参考文献

平野隆久写真『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄監修、門田裕一改訂版監修（増補改訂新版）、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、63頁。ISBN 978-4-635-07019-5。

関連項目

草の一覧'>草の一覧
ハナショウブ'>ハナショウブ

外部リンク

Iris ensata Thunb. var. spontanea (Makino) Nakai - Germplasm Resources Information Network (GRIN) (英語)
Iris ensata Thunb - Integrated Taxonomic Information System (英語)
Iris ensata var. spontanea - National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語)
Iris ensata var. spontanea - Encyclopedia of Life (英語)
ノハナショウブ - 植物雑学事典 岡山理科大学生物地球学部
アヤメ属の花 - 植物形態学 福岡教育大学教育学部
* ノハナショウブ - 植物図鑑・撮れたてドットコム

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