ノルチャ

イタリア中部の古都ノルチャ

ノルチャ（Norcia）は、イタリア共和国ウンブリア州ペルージャ県に位置する、人口約4,500人のコムーネ（基礎自治体）です。この地域は、黒トリュフとプロシュット（生ハム）の産地として世界的に知られており、観光客を魅了しています。また、ベネディクト修道会の創設者である聖ベネディクトゥスがこの地で生まれたことも、ノルチャの歴史と文化に深く根ざしています。

名称と地理

ラテン語ではヌルシア（Nursia）と呼ばれ、英語でも伝統的にNursiaの名で親しまれてきました。イタリア語での発音は [ˈnɔrtʃa] です。地理的には、ペルージャ県の南東部、ヴァルネリーナ地方に位置し、スポレートから東へ約30km、アスコリ・ピチェーノから西へ約40kmの距離にあります。コムーネの面積は約274km²に及び、マルケ州やラツィオ州と境界を接しています。

気候と地震

ノルチャは、イタリアの気候分類でzona Eに属し、2608GGの度日を持っています。また、地震リスクが高い地域（zona 1）に分類されており、過去に何度も地震による被害を受けています。このため、近年では耐震化が進められています。

歴史

ノルチャの歴史は古く、新石器時代にまで遡ります。紀元前5世紀にはサビニ人が定住し、ラテン語でヌルシアと呼ばれました。紀元前205年にはローマの同盟国となり、1世紀頃にはローマの遺跡が建てられました。ベネディクトゥスと彼の双子の妹スコラスティカは、480年にこの地で生まれました。8世紀には、聖ベネディクトゥスの生誕地への巡礼者のために礼拝堂が建設され、10世紀には修道士がノルチャにやってきました。現在、修道士たちは古代ローマ時代の遺跡の上に建てられた聖ベネディクト修道院で生活しています。

ノルチャは、6世紀にランゴバルド人によって征服され、スポレート公国の一部となりました。9世紀にはイスラム教徒の攻撃に遭い、深刻な荒廃を経験しました。11世紀には神聖ローマ皇帝ハインリヒ2世の所領となり、12世紀には教皇領内の独立コムーネとして繁栄しました。コムーネとベネディクト会修道院との協力により、外科医学学校が設立されました。しかし、1324年の地震により、ノルチャの発展は一時的に阻害されました。1354年には再び教皇の権威下に置かれました。

近現代の歴史

20世紀後半以降、ノルチャは度重なる地震に見舞われました。特に1979年と1997年の地震では大きな被害を受けました。しかし、1997年の地震以降、急速に耐震化が進められました。2016年のイタリア中部地震では、周辺地域に甚大な被害が出た一方で、ノルチャでは耐震化の効果もあり、歴史的建造物に多少の損傷があったものの、死者は発生しませんでした。

行政と文化

ノルチャには、多くの分離集落（フラツィオーネ）が存在します。これらの集落は、それぞれ異なる歴史と文化を持っています。ノルチャは「イタリアの最も美しい村」クラブにも加盟しており、その美しい景観は多くの観光客を魅了しています。

食文化

ノルチャは、黒トリュフの産地として世界的に有名です。また、プロシュット（生ハム）をはじめとした豚肉加工品も特産品として知られています。特に、ノルチャの生ハムは古くからその品質が高く評価されており、その加工技術は各地に広まりました。豚肉加工品を扱う店は「ノルチネリア」と呼ばれ、ノルチャ市内には多くの「ノルチネリア」が軒を連ねています。さらに、市域に含まれるカステルッチョは、レンズマメの産地として知られています。

交通

ノルチャには、主要な道路としてSS396とSS685が通っています。これらの道路は、周辺地域へのアクセスを容易にしています。

人物

ノルチャ出身の著名な人物としては、古代ローマの政治家クィントゥス・セルトリウスや、ベネディクト修道会の創設者である聖ベネディクトゥス、そして彼の妹である聖スコラスティカが挙げられます。

まとめ

ノルチャは、その豊かな歴史、食文化、美しい景観、そして人々の努力によって、現代においても魅力的な都市であり続けています。特に、地震への対策を積極的に行ってきたことが、近年の地震被害を最小限に抑える上で大きな役割を果たしています。

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