ノースコーストリミテッド

ノースコースト・リミテッド：大陸を横断した伝説の列車

ノースコースト・リミテッドは、1900年から1971年にかけてノーザン・パシフィック鉄道によって運行された、アメリカ大陸を横断する旅客列車でした。イリノイ州シカゴとワシントン州シアトル、オレゴン州ポートランドを結び、長年にわたり多くの人々を運んだ、名実ともに大陸横断列車の代表格と言える存在です。

複数の鉄道会社との連携と競争

この列車の運行は、ノーザン・パシフィック鉄道単独ではなく、シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道、スポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道といった複数の鉄道会社との緊密な連携によって支えられていました。シカゴとミネソタ州セントポール間はシカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道、ワシントン州パスコとポートランド間はスポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道がそれぞれ担当。まさに一大プロジェクトとして、多くの関係者の努力によって運行が維持されていました。

当時、ノースコースト・リミテッドは、グレート・ノーザン鉄道のエンパイア・ビルダーやミルウォーキー鉄道のオリンピアン・ハイアワサといった豪華列車と競争関係にありました。熾烈な競争の中、乗客を獲得するために、各社は車両の豪華さやサービスの向上にしのぎを削りました。ノースコースト・リミテッドも、競争の中で常に進化を遂げていったのです。また、メイン・ストリーターという補完的な列車も運行されていました。

車両の進化とデザイン

1883年、ノーザン・パシフィック鉄道は、大陸横断鉄道として初めてシアトルに到達しました。そして、その歴史を背景に、1900年、ノースコースト・リミテッドの運行が開始されました。当初は夏季限定でしたが、1902年には毎日運行となりました。

1909年にはプルマン・スタンダード社から新しい車両が導入され、ポートランドへの運行も開始。さらに1911年にはシカゴ・アンド・ノース・ウェスタン鉄道との提携により、セントポールからシカゴへの乗り入れが実現しました。1918年にはシカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道経由に変更となり、シカゴの駅もユニオン駅に変更されています。

1930年には、床屋や男女別の浴室などを備えた、当時最新の車両に更新されました。その後、第二次世界大戦後の1946年には、流線型の新しい車両の導入が決定。インダストリアルデザイナーのレイモンド・ローウィがデザインしたツートングリーンの車両は、1952年から順次導入され、女性乗務員による車内サービスも提供されました。1954年には2階建ての展望車（ドームカー）を追加し、「Vista-Dome North Coast Limited」として宣伝されました。この車両は、乗客に新たな魅力を提供し、競争優位性を高めることに貢献しました。

運行終了とその後

1970年、シカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道、グレート・ノーザン鉄道、スポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道の合併により、ノースコースト・リミテッドの運行はバーリントン・ノーザン鉄道に引き継がれました。しかし、1971年、全米鉄道旅客輸送公社（アムトラック）の発足により、長きにわたる運行の歴史に幕を閉じました。

アムトラック発足後も、ミルウォーキー鉄道とノーザン・パシフィック鉄道の路線を利用した「ノースコースト・ハイアワサ」が1979年まで運行されましたが、ノースコースト・リミテッドとは異なる列車です。

ノースコースト・リミテッドの遺産

ノースコースト・リミテッドは、単なる列車ではなく、アメリカ鉄道史における重要な存在でした。豪華な車両、快適なサービス、そして大陸横断というスケールは、人々に忘れられない旅の思い出を与え、多くの文献や記録にも残っています。その歴史と功績は、現代においても高く評価されており、鉄道ファンのみならず、多くの人々に語り継がれる存在です。

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