ハウメアの衛星

ハウメアの衛星について

ハウメアの衛星とは、太陽系の外縁部に位置する準惑星ハウメアの周囲を公転する2つの衛星、ヒイアカとナマカのことを指します。これらの衛星は、ハワイのW・M・ケック天文台の大型望遠鏡による観測で2005年に発見されました。 ハウメアの衛星は、その形成過程や特徴において、多くの点で特異であると考えられています。

衛星の発見と命名

ハウメア（当時は2003 EL61と呼ばれていました）の周囲を公転する2つの衛星は、カリフォルニア工科大学の研究チームによって発見されました。外側の衛星は2005年1月26日に発見され、発見チームによって「ルドルフ」と仮称されていましたが、仮符号はS/2005 (2003 EL61) 1とされました。内側の衛星は2005年6月30日に発見され、「ブリッツェン」と仮称され、仮符号はS/2005 (2003 EL61) 2と指定されました。その後、2006年9月7日に両方の衛星には番号が与えられ、(136108) 2003 EL61 I, IIとなりました。

2008年9月17日、国際天文学連合は、ハウメアの名称とともに、これらの衛星の正式名称を発表しました。小惑星は「ハウメア」と命名され、Iが「ヒイアカ」、IIが「ナマカ」とされました。これらの名称は、ハワイの豊穣と出産の女神ハウメアの娘に由来します。ヒイアカは、マウナケア天文台が位置するハワイ島の歓喜と愛国心の女神であり、ナマカは水と海の女神です。彼女は、妹であるペレの溶岩が海に流れ込んだ際にそれを冷やし、新しい土地を形成したと伝えられています。

ハウメアの衛星の形成

ハウメアはほぼ岩で構成されており、表層には氷が存在します。元々あった氷のマントルの大部分は、ハウメアを現在の高速回転状態にしたと考えられる巨大な衝突によって吹き飛ばされたと考えられています。この衝突によって生じた破片が集まり、ハウメア族と呼ばれる小さなエッジワース・カイパーベルト天体が形成され、その一部が衛星となったと考えられています。そのため、ナマカよりもさらに小さな衛星が外側に存在する可能性も指摘されていますが、ハッブル宇宙望遠鏡による観測では、ハウメアの重力の影響範囲内で、ハウメアの明るさの0.25%を超える明るさの衛星は確認されておらず、さらなる衛星が存在する可能性は低いと考えられています。

表面特性

外側を公転するヒイアカは、直径約350 kmで、2つの衛星の中で大きく明るい方です。その表面には、ほぼ純粋な結晶の水でできた氷が大量に存在することが、赤外線スペクトルの観測によって明らかになっています。この特徴は、エッジワース・カイパーベルト天体としては珍しいものです。一方、内側の衛星ナマカは、ヒイアカの約10分の1の質量を持ち、直径は約170 kmと推定されています。

両方の衛星の大きさは、ハウメアと同じ赤外線アルベド（反射率）を持つと仮定して計算されています。これは、スペクトルが同じ表面組成を持っていることを示唆しており、合理的な仮定です。ハッブル宇宙望遠鏡（HST）による観測では、1.6 µmのスペクトル線が衛星のスペクトルでも確認されており、水の氷の存在が示唆されています。

軌道特性

ヒイアカは約49日でハウメアの周りを一周します。ナマカは中程度の楕円形の非ケプラー軌道を約18日で公転しています。ハウメアの衛星を形成した衝突は、太陽系の初期に発生したと考えられており、その後数十億年かけて軌道が円形に近づくはずでした。しかし、ナマカの軌道は、潮汐加速によってハウメアから外側に移動する際に、より大きなヒイアカの軌道共鳴の影響を受けて乱された可能性が指摘されています。

ナマカは、過去に何度も軌道共鳴の影響を受け、その後、共鳴状態から脱出したと考えられています。現在では、8:3の軌道共鳴状態にあるか、またはその近傍にあるとされています。この共鳴は、ナマカの軌道の近点引数の歳差運動（軌道の向きの変化）を引き起こし、55年周期で約-6.5°/年という速度で変動させています。

観測上の特徴

現在、ハウメアの衛星の軌道は地球からほぼ真横に見えており、ナマカは2009年から2011年まで定期的にハウメアを掩蔽していました。このような現象により、ハウメアのサイズと形状を正確に測定することが可能になりました。ヒイアカは、1999年にハウメアを掩蔽しましたが、その後約130年間は掩蔽することはないと予想されています。しかし、ヒイアカによるナマカの軌道への影響によって、ナマカによる掩蔽の観測機会はさらに数年間にわたり維持されました。

ハウメアの衛星は、口径が約2メートル未満の望遠鏡では検出が難しいほど暗いですが、ハウメア自体は視等級が17.5で、冥王星やマケマケに次いでエッジワース・カイパーベルト天体の中で3番目に明るい天体であるため、大型のアマチュア望遠鏡でも検出が可能です。

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