ハンガリー社会党

ハンガリー社会党：変遷と課題

ハンガリー社会党（MSZP）は、ハンガリーの社会民主主義政党であり、旧ハンガリー社会主義労働者党を母体とする政党です。1989年の体制転換後、ハンガリー政治の中核を担ってきましたが、近年は支持率の低下や党内分裂といった困難に直面しています。本稿では、MSZPの設立から現在までの歴史、政策、選挙結果、そして党首の変遷について詳細に解説します。

設立と初期の歩み

1987年から始まったハンガリーの民主化運動を受け、1988年秋以降、多くの政党が結成・復活しました。共産党（当時、ハンガリー社会主義労働者党）内でも改革派と保守派の対立が激化し、1989年10月、党大会において一党独裁制の放棄と党名変更（ハンガリー社会党）が決定されました。しかし、党内には社会民主主義政党への転換を推進する改革派と、旧体制の維持を望む保守・中間派が依然として存在し、激しい対立が続きました。初代党首には、1968年からの経済改革の推進者であるニェルシュ・レジェーが就任しました。

1990年の総選挙では、MSZPは第4党にとどまりました。この敗北を受け、ニェルシュは党首をホルン・ジュラに譲り、党は社会民主主義政党としての再構築を目指しました。この過程で、体制転換に貢献した多くの有力メンバーが離党するなど、大きな変革期を迎えたのです。

政権獲得と失墜

1994年の総選挙でMSZPは勝利し、ホルンが首相に就任しました。自由民主同盟（SZDSZ）との連立政権を樹立し、民営化や外資導入を推進しましたが、その過程で汚職事件や治安悪化といった問題も発生しました。1998年の総選挙では、これらの問題や市場経済化への反発からフィデス＝ハンガリー市民党（フィデス）に敗北し、ホルンは党首を辞任しました。

2002年の総選挙では、MSZPはメッジェシ・ペーテルを首相候補に擁立し、ポピュリスト的な公約を掲げることで勝利しました。しかし、明確な政策の欠如や財政赤字の拡大などから支持率は低下し、2004年には欧州議会選挙でフィデスに敗北しました。2006年の総選挙では、ジュルチャーニ・フェレンツが首相に就任しましたが、緊縮政策や経済実績の虚偽報告問題などが発覚し、支持率は急落しました。

大敗と党分裂

2010年の総選挙では、MSZPはフィデスに大敗し、野党に転落しました。党内では刷新を求める声が高まり、ジュルチャーニらを中心とする党内会派「民主連合」と執行部との対立が表面化しました。結果として、2011年、ジュルチャーニらは離党し、「民主連合」を結成。MSZPは分裂することとなりました。

その後も、MSZPは選挙で苦戦を強いられ、支持率は低迷を続けました。党首の交代も頻繁に行われ、党内混乱は続きました。2014年の総選挙では、中道左派連合を結成して臨みましたが、議席数を大幅に減らし、政権奪回には失敗しました。欧州議会議員選挙でも議席数を減らし、第三党に後退しました。

支持基盤と政策

MSZPの支持基盤は、社会主義時代からの旧共産党支持者、経済界の有力者、労働者、年金生活者、貧困層などに広がっています。特に、旧炭鉱都市や重工業地域での支持は強いとされます。政策としては、社会福祉の充実とともに、市場経済化、外資導入などの推進も掲げています。しかし、党内には社会主義、社会民主主義、リベラル社会主義など、複数のイデオロギーが存在し、その多様性が課題となっています。

まとめ

ハンガリー社会党は、ハンガリー政治史において重要な役割を担ってきた政党です。しかし、体制転換後の混乱、市場経済への対応、党内対立など、様々な困難に直面し、現在も苦戦を強いられています。今後のMSZPの動向は、ハンガリー政治の行方にも大きく影響を与えるでしょう。

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