ハーシェミー・ラフサンジャーニー

アクバル・ハーシェミー・ラフサンジャーニー：激動のイランを駆け抜けた政治家

アクバル・ハーシェミー・ラフサンジャーニー（1934年8月25日 - 2017年1月8日）は、イランの政治史において重要な役割を果たした人物です。彼は大統領（第4代）をはじめ、様々な要職を歴任し、イランの政治・経済・社会に大きな影響を与えました。

生い立ちと革命運動への参加

ラフサンジャーニーは、イラン南東部のケルマーン州バフラマーンで、ウラマー（イスラム教の知識人）であり、農業主でもあった父の元に生まれました。1948年、彼はシーア派の聖地ゴム市に赴き、ルーホッラー・ホメイニーに師事し、宗教的な知識を深めました。

1950年代初頭、ラフサンジャーニーは、モハンマド・モサッデグ首相による国家独立強化の動きを支持し、シャー体制との闘争に身を投じました。モサッデグ政権がクーデターで倒れると、彼は当局のブラックリストに載せられ、政治的な迫害を受けることになります。

1960年代、モハンマド・レザー・パフラヴィー体制は、「白色革命」と呼ばれる社会・経済改革を実施しました。しかし、この改革はウラマーの権限を侵すものであり、ホメイニーはゴムで蜂起しますが、鎮圧されます。ラフサンジャーニーはホメイニーの弟子として投獄され、その後も複数回逮捕されるなど、苦難の時代を送りました。

イラン・イスラム革命と権力掌握

1979年のイラン・イスラム革命後、ラフサンジャーニーは内務相に任命され、革命後の混乱収拾に尽力しました。彼は、テロ行為からアリー・ハーメネイー大統領を護衛し、テヘラン金曜礼拝の導師の座を引き継ぐなど、急速に頭角を現しました。この職務を通じて、彼はホメイニーに次ぐ地位を確立し、政治的な影響力を強めていきました。

1980年には、マジュリス（議会）議長に就任し、議会を重要な権力機関へと変貌させました。彼は、内閣の組閣や首相の任命においても決定的な役割を果たし、イラン政治の中枢を担う存在となりました。

イラン・イラク戦争と停戦への道筋

イラクとの開戦時、ラフサンジャーニーは国防最高会議におけるホメイニーの私的代理人として、戦争遂行に深く関与しました。彼は、イスラム革命防衛隊を組織し、正規軍とのバランスを取りながら、イランの防衛体制を強化しました。

1988年、ラフサンジャーニーは、ホメイニーにイラクとの停戦を受け入れさせました。彼は、戦争の長期化による国家疲弊を懸念し、現実的な判断を下したのです。この停戦により、イランは長きにわたる戦争から解放され、復興への道を歩み始めることになりました。

大統領として

1989年、ラフサンジャーニーは大統領に選出され、イランの改革を主導しました。彼は、西側諸国との関係改善を目指し、アメリカとの関係正常化を模索しました。また、女性の権利拡大や文化的な自由化を推進するなど、社会の開放にも取り組みました。

しかし、彼の改革は保守派の反発を招き、経済状況も期待されたほど改善しなかったため、国民の不満も高まりました。1993年に再選されたものの、改革の道のりは決して平坦ではありませんでした。

大統領退任後と晩年

1997年、ラフサンジャーニーは憲法の規定により大統領を退任し、モハンマド・ハータミーにその座を譲りました。しかし、彼はその後も政治的な影響力を保持し続けました。

2005年の大統領選挙に出馬しましたが、マフムード・アフマディーネジャードに敗れました。2009年の大統領選挙では、改革派のミール・ホセイン・ムーサヴィー候補を支援しましたが、アフマディーネジャード大統領から「腐敗」を指摘されるなど、批判にさらされました。

2013年の大統領選挙にも立候補しましたが、監督者評議会の事前審査で失格となりました。2017年1月8日、心臓発作によりテヘラン市内の病院で死去しました。

人物像と評価

ラフサンジャーニーは、家族を大切にする良き家庭人としても知られていました。彼の資金源は、農場からの収入と不動産でした。

彼は、イランの政治史において、革命、戦争、改革という激動の時代を駆け抜けた政治家として記憶されています。その功績と批判は様々ですが、イランの現代史に大きな足跡を残したことは間違いありません。

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