白色革命

白色革命：イラン近代化の光と影

白色革命とは、1963年にイランのシャー、モハンマド・レザー・パフラヴィー2世が主導した、イラン社会の近代化と西欧化を目指す一連の改革の総称です。上からの革命として推進されましたが、その急進的な手法は、伝統的な社会構造に大きな影響を与え、結果的にイラン革命の一因となりました。

改革の背景と概要

パフラヴィー2世は、アメリカのケネディ政権からの改革要求に応じ、上からの近代化による経済成長を目指しました。アメリカの支援を受け、農地改革、工業化、労働者の待遇改善、女性参政権の付与、教育の向上など、多岐にわたる西欧化政策を推進しました。これらの政策は、国内の資本と支持基盤を地方の地主層から中央のブルジョワジーへと移行させ、近代的な産業社会を築くことを目的としていました。

また、国家の西欧化を推し進める一方で、イスラムよりもアーリア人起源を重視する西洋的なナショナリズムを提唱しました。石油収入を利用した利益供与や協調組合制度の導入も行い、自身の権力基盤を強化しようとしました。1974年のオイルショック後の原油価格高騰で得た収入は、これらの政策に積極的に投入されました。

改革の負の側面

しかし、白色革命は多くの問題点を抱えていました。産業基盤が未整備なまま工業化を急いだため、輸入された商品が港で滞留するなど、物流の混乱が生じました。急激なインフレは庶民の生活を圧迫し、失業者の増加と貧富の格差拡大を招きました。また、政府高官や王室周辺における大規模な汚職が横行し、オイルダラーを狙った商社からの賄賂が横行しました。文盲率が高く、近代化の基礎が十分に整っていないイラン社会では、改革の恩恵は一部の富裕層にとどまりました。

石油価格の暴騰によって政府は潤沢な資金を得ましたが、投資が先行し、非効率な開発が進められました。パフラヴィー2世は軍備増強に力を入れ、アメリカから大量の兵器を購入しました。しかし、1970年代後半に入ると原油価格が安定化し、白色革命は破綻へと向かいました。

イラン革命への影響

白色革命の破綻は、国民の間に経済格差と政治への不満を増大させ、パフラヴィー2世の求心力を低下させました。特に、リベラルなテクノクラートと保守的なシーア派宗教指導者との対立が激化し、これが後に起こるイラン革命の土壌となりました。イラン革命の指導者であるホメイニー師は、白色革命そのものには直接反対しませんでしたが、その独裁的な性格を強く批判し、国外追放されることとなりました。

改革の成果と限界

白色革命は、国民の識字率向上（95%から50%へ減少）、農地改革、教育の振興、世俗化などの成果を上げました。しかし、農地改革は農民の自立を促せず、都市部への人口流出を招きました。また、海外留学を奨励した結果、反体制派を育成してしまう側面もありました。女性の権利向上や世俗化政策は、保守的な宗教指導者層からの反発を招きました。

まとめ

白色革命は、イランの近代化を目指した壮大な社会実験でしたが、急進的な手法と社会の実情との乖離により、多くの問題点を露呈しました。経済格差の拡大、汚職の蔓延、そして政治的な不満の増大は、イラン革命へとつながる重要な要因となりました。白色革命は、上からの改革の限界を示すとともに、社会の多様な価値観を考慮したバランスの取れた発展の重要性を教えています。

もう一度検索