ハーツビルの戦い

ハーツビルの戦い：ストーンズリバー方面作戦の緒戦

ハーツビルの戦いは、南北戦争中の1862年12月7日に、テネシー州北部で繰り広げられた戦闘です。この戦いは、ストーンズリバー方面作戦の幕開けを告げるものであり、北軍と南軍の間で激しい攻防が展開されました。

戦いの背景

1862年11月初頭、北軍のウィリアム・ローズクランズ将軍は、カンバーランド軍を率いてナッシュビルからマーフリーズバラへ進軍を開始しました。一方、南軍のブラクストン・ブラッグ将軍は、ペリービルの戦いでの敗北後、この地域に軍を後退させていました。ブラッグ将軍は、ジョン・ハント・モーガン大佐に騎兵隊を指揮させ、ローズクランズ軍の補給線を攻撃するよう命じました。ハーツビルは、ナッシュビルの東約60キロメートル、カンバーランド川沿いの要衝であり、マーフリーズバラの北に位置する渡河点でした。ハーツビルの戦いは、モーガン大佐の襲撃作戦の一環として、ローズクランズ軍の主力部隊が本格的に動き出す前に発生しました。

戦闘の経過

ハーツビルの渡河点を守っていたのは、北軍カンバーランド軍第14軍団第39旅団でした。この旅団は、アブサロム・B・ムーア大佐が指揮し、オハイオ州の第106歩兵連隊、第108歩兵連隊、イリノイ州の第104歩兵連隊、そしてインディアナ州の第2騎兵連隊で構成されていました。1862年12月7日の早朝、モーガン大佐は暗闇に紛れて川を渡り、奇襲攻撃を敢行しました。モーガン隊は、主にケンタッキー州出身の兵士約1,400名で構成されており、北軍旅団よりも兵力で劣っていました。しかし、北軍の約3倍の兵力が、約14キロメートル離れたカスタリアンスプリングスに駐屯していたものの、戦闘に介入するには距離が離れすぎていました。

モーガン隊は、北軍の宿営地を奇襲しました。南軍兵士が北軍の制服を着て哨戒線を通過したという証言や、民間人に扮して避難民を装っていたという証言があります。攻撃は午前6時45分に始まり、大砲による砲撃と歩兵による攻撃が同時に行われ、騎兵部隊は側面と後方を襲撃しました。ムーア大佐の部隊の一部は1時間後に退却を始め、これが混乱を招き、北軍全体が後退を余儀なくされました。午前8時30分までには、南軍が北軍を包囲し、ムーア大佐は降伏を決意しました。

戦いの結果と影響

ハーツビルの戦いにおいて、北軍は58名の戦死者を出したのに対し、南軍の戦死者は149名でした。しかし、モーガン大佐は北軍兵士1,844名を捕虜とし、大量の装備と物資を鹵獲しました。南軍全体の指揮官であるジョセフ・ジョンストン将軍は、この戦いを「輝かしい手柄」と賞賛し、モーガン大佐を即座に准将に昇進させるよう推薦しました。アメリカ連合国大統領のジェファーソン・デイヴィスがたまたまマーフリーズバラ近郊にいたため、モーガン大佐の帰還時に自ら昇進を伝えました。

ハーツビルの戦いは、その後のネイサン・ベッドフォード・フォレストによる西テネシーへの襲撃（1862年12月～1863年1月）や、モーガン大佐によるケンタッキー襲撃（1863年6月～7月）といった南軍の襲撃作戦の先駆けとなりました。ローズクランズ将軍は、12月29日にマーフリーズバラに到着し、ストーンズリバーの戦いの準備を進めることになります。

この戦いは、南北戦争における西部戦線の重要な転換点となり、その後の戦局に大きな影響を与えました。南軍の奇襲戦術の成功例として、歴史に名を残しています。

参考文献

National Park Service battle description
Foote, Shelby, The Civil War, A Narrative: Fredericksburg to Meridian, Random House, 1958, ISBN 0-394-49517-9.
* U.S. War Dept., The War of the Rebellion: a Compilation of the Official Records of the Union and Confederate Armies, U.S. Government Printing Office, 1880–1901.

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