ハードツービート

Hard to Beatは、アイルランドで生産され、フランスで調教を受けた競走馬です。その競走馬としてのキャリアは、輝かしいものとなりました。

Hard to Beatは、当初アメリカ人馬主に所有されていましたが、わずか920ギニーという低価格で取引されました。しかし、その才能はすぐに開花します。2歳時にはグラン・クリテリウム（G1）を制覇し、フランスの2歳チャンピオンの座に輝きました。3歳になると、さらに勢いを増し、フォンテーヌブロー賞（G3）、リュパン賞（G1）とG1競走を含む重賞を連勝。ジョッケクルブ賞（フランスダービー）では大本命として期待を集めました。

そして、運命の転換点が訪れます。ジョッケクルブ賞のわずか4日前、Hard to Beatは115万ドルという高額で日本人馬主の樫山純三氏に売却されました。この取引は、大きな話題を呼びました。

樫山氏をオーナーとして迎えたHard to Beatは、レスター・ピゴット騎手を鞍上にジョッケクルブ賞に挑みました。そして、見事優勝。この勝利は、日本人馬主にとって初のヨーロッパクラシック競走制覇という歴史的快挙となりました。しかし、この勝利の裏側には、批判的な意見も存在しました。フランスの新聞『ル・モンド』紙には、「名誉を金で買った」という論調の記事が掲載されたのです。

ジョッケクルブ賞制覇後も、Hard to Beatは活躍を続けました。3歳秋のニエル賞（G2）を制し、翌年の凱旋門賞（G1）では、1番人気に支持されながらも3着という好成績を収めました。4歳シーズン終了をもって競走馬を引退しました。

引退後は、種牡馬としての道を歩み始めます。まずフランスで3年間種牡馬として供用され、その後、樫山氏の所有する日本のオンワード牧場に移されました。フランスでは、ディアヌ賞（フランスオークス）優勝馬Dunetteなど、活躍馬を輩出しました。日本では中堅種牡馬としての地位を築き、ブルードメアサイアーランキングの上位に顔を出すなど、その血統は日本の競馬界に影響を与え続けました。1990年に死亡しました。

Hard to Beatの産駒には、フランスで活躍したDunette（ディアヌ賞、サンクルー大賞など）、Hard to Sing（エヴリー大賞、ジャンプラ賞など）、Indigene（オマール賞、ハーヴェスター国際大賞など）、Good to Beat（ペネロペ賞など）などがいます。日本でも、ダイセキテイ（目黒記念、ダイヤモンドステークス）、オンワードボルガ（中山大障害など）、タケノハナミ（ローズステークス）、ガクエンツービート（青葉賞、菊花賞2着）など多くの活躍馬を輩出しました。

Hard to Beatの血統背景にも注目すべき点があります。その父と祖父は、いずれも日本に導入された種牡馬であり、その母方の血統には、イギリスの2歳牝馬チャンピオンStar of Indiaや、ナンソープステークス優勝馬High Treasonといった名馬が名を連ねています。

Hard to Beatは、競走馬としての華々しい活躍、種牡馬としての成功、そして日本競馬界への貢献など、様々な面から記憶に残る名馬と言えるでしょう。その生涯は、国際的な競走馬取引の側面、そして血統の重要性を改めて認識させてくれる、興味深い物語となっています。

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