バジー・フェイトン

バジー・フェイトン（Buzzy Feiten、本国ではバズ・フィ―テン Buzz Feiten とも称される）は、1948年 11月4日にこの世に生を受けた、アメリカ合衆国を代表するブルース、ロック、そしてジャズの分野で活躍するギタリストです。彼はニューヨーク州で少年時代を過ごし、やがて音楽の世界でその才能を開花させていきました。

彼のキャリアの初期における印象的なエピソードとして、1968年4月15日にニューヨークのジェネレーション・クラブで行われた伝説的なジャムセッションへの参加が挙げられます。この夜には、ジミ・ヘンドリックス、B.B.キング、ポール・バターフィールドといった錚々たる顔ぶれが集結しており、当時まだ19歳だったフェイトンは、ベーシストとしてこの歴史的な演奏に加わりました。

同年、彼はギタリストとして大きな転機を迎えます。ポール・バターフィールド・ブルース・バンドを脱退したエルヴィン・ビショップの後任として、同バンドへの加入を要請されたのです。彼はこのオファーを受け入れ、バンドの主要メンバーとして活動を開始しました。1969年10月にリリースされたバンドの5作目のアルバム『Keep On Moving』では、ギター演奏はもちろんのこと、オルガンやフレンチホルンといった多様な楽器を操る彼の多才さが光っています。

ポール・バターフィールド・ブルース・バンドでの活動を経て、彼はラスカルズに参加しました。1971年のアルバム『ピースフル・ワールド』、そして翌1972年の『アイランド・オブ・リアル』といった作品に彼の名がクレジットされており、ここでも彼のプレイを聴くことができます。

1972年には、キーボーディストのニール・ラーセンらと共にフル・ムーンというプロジェクト名義でアルバムを発表。その後、ニール・ラーセンのソロ作品で共演を重ねたことをきっかけに、二人はラーセン＝フェイトン・バンドを結成します。1980年にリリースされた同名のアルバム『ラーセン＝フェイトン・バンド』は大きな注目を集めました。特にアルバムのオープニングを飾る楽曲「今夜は気まぐれ（Who'll Be the Fool Tonight）」はシングルカットされ、米Billboard Hot 100チャートで最高位29位を記録するヒットとなりました。フル・ムーンとしても、後年セカンドアルバムをリリースしています。

フェイトンのキャリアは、自身のバンド活動にとどまらず、セッション・ミュージシャンとしても非常に多くの著名アーティストの作品に彩りを加えています。その共演者のリストは枚挙にいとまがなく、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、ベット・ミドラー、ジェームス・テイラー、グレッグ・オールマン、リッキー・リー・ジョーンズ、チャカ・カーン、アル・ジャロウ、ボブ・ディラン、ブレッカー・ブラザーズ、デイヴィッド・サンボーン、マイケル・フランクス、Mr.ミスター、デイヴ・コーズ、オリビア・ニュートン＝ジョンなど、ジャンルを超えた幅広いミュージシャンたちが含まれています。中でも、スティーヴィー・ワンダーの傑作アルバム『心の詩』（1972年）に収録された「スーパーウーマン」での長いギターソロは特筆すべき貢献です。このソロは、なんとファースト・テイクがそのまま採用されたという逸話が残されています。

自身の音楽性について、フェイトンはしばしば「フュージョン奏者」と括られることに対して異なる見解を示しています。インタビューなどでは、自身の音楽的な基盤はブルース、ファンク、そしてR&Bにあると語っており、彼のプレイに脈打つグルーヴや情感豊かな表現は、まさにこれらのルーツに根差したものであると言えるでしょう。

彼のディスコグラフィには、リーダー作品やフル・ムーン名義での作品が複数存在します。代表的なものとしては、『ラーセン＝フェイトン・バンド』(1980年)、『フルムーン』(1982年)、そして近年リリースされた『バジー・フェイトン・ワーリーズ』(2000年)や『フル・ムーン・セカンド』(2002年)などがあります。また、参加作品としては、ニール・ラーセンの『ジャングル・フィーヴァー』や『ハイ・ギア』、リッキー・リー・ジョーンズのデビュー作『浪漫』をはじめとする複数のアルバム、そして前述のスティーヴィー・ワンダーの『心の詩』や『トーキング・ブック』といった歴史的な名盤が含まれています。

バジー・フェイトンは、その卓越した演奏技術と多様な音楽性で、自身のリーダープロジェクトのみならず、数え切れないほどのアーティストの作品に貢献してきた、稀代のギタリストと言えるでしょう。彼のプレイは、今なお多くの音楽ファンに愛されています。

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