バス共通カード

バス共通カードとは

バス共通カードは、かつて関東地方の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県を中心に、路線バスと都電で共通利用ができた磁気式プリペイドカードです。回数乗車券としての位置づけで、利用可能エリアは段階的に拡大し、茨城県や群馬県、静岡県、山梨県の一部地域でも利用できました。

カードの特徴

カードの券面には「バス〈共通〉カード」と表記され、事業者によって「バスカード」「共通カード」などと呼ばれることもありました。利用者の間では「バスカード」と略されることが多かったようです。カードの発行や規格は「バス共通カード規格管理委員会」によって管理されていました。

バス共通カードには、1,000円、3,000円、5,000円の3種類の券種があり、購入額よりも多い金額を利用できるプレミアムが付加されていました。例えば、1,000円券では1,100円分、3,000円券では3,360円分、5,000円券では5,850円分利用できました。これは、過去に発売されていたパスネットやオレンジカードなどとは異なる特徴でした。

標準デザインは、1,000円券が桃色、3,000円券が青色、5,000円券が黄色で、券面にはバス共通カードの文字、シンボルマーク、利用可能エリアを示す文言、虹のイラスト、プレミアム付きの金額、発行事業者名などが記載されていました。また、各事業者ごとに様々なデザインの記念カードも発行され、コレクションの対象となっていました。

バス共通カードの歴史

共通回数券の時代

バス共通カードのルーツは、1984年に発売された「東京都区内バス共通回数乗車券」に遡ります。当初は東京都区内均一運賃地区のバス事業者10社局が参加し、その後、川崎市や横浜市の事業者も加わりましたが、それぞれの共通回数券には互換性がありませんでした。

神奈中バスカード

1988年には、神奈川中央交通（神奈中）が独自のバスカード「神奈中バスカード」を導入しました。このカードはバス共通カードとはシステム的に関連はありませんでしたが、プレミアムが付加されていた点や、後のPASMO・Suicaの「バス特典利用サービス」の先駆けとなりました。神奈中バスカードは、神奈中が独占的に運行するエリアでは比較的早く普及しました。

共通化の端緒

1992年には、神奈川中央交通、横浜市営バス、川崎市バス、江ノ島電鉄の4社局が、横浜市・川崎市内の均一運賃路線限定で、「バス共通カード」と「マリンカード」を導入しました。これがバス共通カードの始まりですが、均一運賃区間用であり、神奈中バスカードとは互換性がありませんでした。

都内への拡大

1994年には、東京都交通局の都営バスや都電、京浜急行バスなどがバス共通カードを導入し、東京都区内均一運賃区間での利用が可能になりました。その後、多摩地域や神奈川県内、埼玉県、千葉県にも導入が進み、1都3県にまたがる広範囲で利用できるようになりました。

PASMOへの移行と磁気式カードの終焉

2007年3月18日にPASMOが導入されると、バス共通カードの利用は段階的にPASMOへ移行しました。ほとんどの事業者は2010年3月〜4月にバス共通カードの販売を終了し、同年7月末には利用も終了しました。川崎市交通局のみスケジュールが異なり、2010年6月末に販売終了、同年10月31日に利用終了となりました。

2010年11月1日以降は、全事業者が払い戻し対応のみとなりました。

バス共通カードの利用方法

バス共通カードは、バス車内や停留所に設置されたカードリーダーに通して利用します。利用可能なバスには「バス共通カード取扱車」または「共通カード取扱車」のステッカーが貼られています。また、PASMO導入後は「PASMO Suica バス共通カード ご利用いただけます」のステッカーが貼られている場合でも、バス共通カードを利用できます。

前払い式の場合、乗車時にカードをカードリーダーに通します。路線によっては、降車停留所を申告する必要がある場合があります。

後払い式の場合、乗車時と降車時にカードをカードリーダーに通します。乗車時にカードを通すことで、乗車停留所を記録します。乗車時にカードが見つからない場合などは、乗務員が対応します。

バス共通カードは、小児運賃や複数人で1枚のカードを利用することができました。

購入方法

バス共通カードは、各事業者の営業所、案内所、バス車内、コンビニエンスストア、駅売店などで購入できました。また、テレホンカードの自動販売機で取り扱っている場合や、イベント会場で販売されることもありました。記念カードは、通信販売で販売されることもありました。

PASMO導入後の動向

PASMO導入後も、バス共通カードはすぐに廃止されませんでした。バス共通カードには、購入額以上の金額を利用できる特典があり、PASMOにもバス利用特典サービスが導入されましたが、バス共通カードの需要は根強く残っていました。

しかし、PASMO・Suicaでのバス利用者が増加し、カードリーダーの保守費用もかかることから、多くの事業者が2010年3月31日に発売を終了し、同年7月31日に利用を終了しました。川崎市交通局は、2010年6月30日発売終了、同年10月31日利用終了でした。

払い戻し期間は、利用終了日の翌日から5年間で、2015年に終了しました。

利用可能であったバス事業者

バス共通カードは、以下の事業者で利用可能でした。

川崎市交通局
東京都交通局
横浜市交通局
東急バス
京王電鉄バス
西武バス
国際興業
小田急バス
京浜急行バス
京成バス
東武バスセントラル
神奈川中央交通
相鉄バス
江ノ電バス藤沢
箱根登山バス
船橋新京成バス
* 富士急湘南バス

※このリストは一部です。詳細については、本文中のリストをご覧ください。

ステッカーについて

バス共通カードが利用できるバスには、「バス共通カード取扱車」（緑色のステッカー）または「共通カード取扱車」（青色のステッカー）が貼られていました。PASMO導入後は、「PASMO Suica バス共通カード ご利用いただけます」のステッカー（桃色のステッカー）が貼られるようになりました。また、一部の事業者では、既存のステッカーとPASMO関連のステッカーを併用していました。

カード製造会社

カード裏面には、製造会社を示すアルファベットが記載されていました。Kは共同印刷、Tは巴川製紙所を表します。

まとめ

バス共通カードは、関東地方のバス利用を便利にした磁気式プリペイドカードでした。PASMOの登場によってその役割を終えましたが、その歴史は、今日の交通系ICカードの発展に繋がっています。

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