バニティ・フェア (1913年創刊のアメリカ合衆国の雑誌)

アメリカ文化を彩った高級社交誌『バニティ・フェア』：輝かしい歴史と不敬事件、そして復活

『バニティ・フェア』は、1913年から1936年にかけてアメリカで発行されていた、高い人気を誇った社交雑誌です。男性向けファッション誌『ドレス』の買収から始まったコンデ・ナスト社の出版事業において、『バニティ・フェア』は重要な役割を果たしました。当初は『ドレス・アンド・バニティ・フェア』という名称でしたが、すぐに『バニティ・フェア』に改題され、個性的な編集長フランク・クラウニンフィールドのもとで発展を遂げます。

クラウニンフィールドは、才能あふれる作家や芸術家を数多く起用しました。編集主幹にはロバート・ベンチリーが就任し、のちに劇作家として名を馳せるロバート・E・シャーウッドなども編集に加わりました。彼らは、アルゴンキン・ホテルに集う文人集団「アルゴンキン・ラウンド・テーブル」のメンバーでもあり、『バニティ・フェア』は彼らの才能と交友関係によって独特の文化的な色彩を帯びていきました。

1920年代には、オルダス・ハクスリー、T・S・エリオット、ガートルード・スタインといった錚々たる顔ぶれの作家たちが寄稿。ドロシー・パーカーの辛辣な劇評や、エドワード・スタイケンの洗練された写真なども掲載され、雑誌は高い評価を獲得しました。『ザ・ニューヨーカー』とアメリカ文化界の覇権を競い合うほどの人気ぶりで、トーマス・ウルフやP・G・ウッドハウスといった人気作家たちの作品も掲載されました。

広告収入も好調で、1915年には掲載広告ページ数がアメリカでトップの座に君臨するほどでしたが、世界恐慌の直撃を受け、広告収入の激減を招きます。発行部数は9万部に達するも、1936年3月号をもって休刊、そして『ヴォーグ』誌への統合が決定されました。

しかし、『バニティ・フェア』の歴史はそこで終わらなかったのです。1935年8月号に掲載された、日本の皇室を冒涜する漫画が問題となり、「バニティ・フェア不敬事件」と呼ばれる外交問題に発展しました。日本政府はアメリカ政府に抗議し、アメリカ側も遺憾の意を示したものの、漫画家の反論などから事態は収束せずに終わりました。

それからしばらく時が流れ、1983年、コンデナスト・パブリケーションズは『バニティ・フェア』を復活させました。ポップカルチャー、ファッション、政治といった現代的な話題を取り上げる雑誌として生まれ変わり、現在もアメリカを代表する雑誌の一つとして発行されています。

このように、『バニティ・フェア』は、世界恐慌や外交問題といった困難を乗り越え、時代の変化に適応しながら、1世紀近くにわたってアメリカ文化に影響を与え続けた、歴史と伝統を持つ雑誌なのです。その輝かしい歴史と、不敬事件、そして復活劇は、メディア史における興味深い一章として語り継がれています。

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