バブラク・カールマル

バブラク・カールマル：アフガニスタンの激動を生き抜いた政治家

バブラク・カールマル（1929年1月6日 - 1996年12月3日）は、アフガニスタンの政治家、共産主義者であり、第3代革命評議会議長を務めました。彼は、アフガニスタンの激動の時代を象徴する人物であり、その生涯は複雑な政治情勢と深く結びついています。

生い立ちと政治活動の初期

カールマルは将軍の息子として生まれ、カーブル大学法学部在学中に共産主義に傾倒しました。彼は政治運動に積極的に参加し、1965年にはアフガニスタン人民民主党（PDPA）の創設メンバーとなりました。王政時代には下院議員としても活動し、政治家としてのキャリアをスタートさせました。

人民民主党の分裂と権力闘争

1967年、アフガニスタン人民民主党はハルク派とパルチャム派に分裂し、カールマルはパルチャム派の穏健派指導者となりました。1977年に党は再統合されましたが、1978年のクーデターでヌール・ムハンマド・タラキー書記長率いる人民民主党が政権を奪取し、アフガニスタン民主共和国（DRA）が成立すると、国内は急激な社会主義化と親ソ連政策が進められました。カールマルは副首相に就任しましたが、党内抗争が再燃し、ハルク派が台頭する中で、1978年に副首相を解任され、駐チェコスロバキア大使としてプラハに事実上の亡命を余儀なくされました。

ソ連のアフガニスタン侵攻と復権

1979年のソ連のアフガニスタン侵攻により、ハルク派のハフィーズッラー・アミーン議長が殺害されると、ハルク派は壊滅状態に陥りました。ソ連に擁立されたカールマルは帰国し、革命評議会議長兼党書記長に就任し、パルチャム派が権力を掌握しました。しかし、人民民主党政権の宗教弾圧やソ連一辺倒の政策に対する反発から、イスラム戦士（ムジャーヒディーン）による反政府ゲリラ活動が活発化し、国内は混乱を極めました。

失脚と晩年

ソ連は、事態を収拾できないカールマルを次第に失敗と見なすようになり、新たな指導者としてムハンマド・ナジーブッラーを擁立しました。1986年、カールマルは「健康上の理由」で党書記長を辞任し、ナジーブッラーにその座を譲りました。その後、革命指導評議会議長および最高会議幹部会議長も辞任し、1996年にモスクワで死去するまでの生涯をそこで過ごしました。

パーソナル

カールマルはパシュトゥーン人であり、ギルザイ部族連合のモッラヘル部族出身です。彼の父はパクティヤー州知事で少将であり、母はタジク人でした。彼は「働き者」を意味するカールマルという名前を1957年に受け入れています。

カールマルの遺産

バブラク・カールマルの生涯は、アフガニスタンの政治的混乱とソ連の影響下における複雑な権力闘争を反映しています。彼の政治キャリアは、アフガニスタンの近代史における重要な時期を象徴しており、その遺産は今日でも議論の対象となっています。

参考文献

吉村文成「「重要日誌」」『撤兵と政権交替 : 1986年のアフガニスタン』アジア経済研究所、1987年、[589]-600頁。doi:10.20561/00039061。hdl:2344/00002040。ISBN 9784258010875。https://doi.org/10.20561/00039061。

関連項目

アフガニスタンの国家元首の一覧

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