バラツケー

バラツケー（Barraques）

1927年にフランスで誕生し、1949年10月25日にその生涯を終えたアングロアラブ種の種牡馬です。日本へ輸入された後、特に戦後にかけて、その血統が日本のアングロアラブ競馬界で計り知れない繁栄をもたらしました。この項目で記載される馬齢は、すべて2000年以前に用いられていた旧表記（数え年）に基づきます。

バラツケーの父はサラブレッドのComtatですが、その父系をさらに遡ると、高名なエクリプスの直系の中でも、ポテイトーズやキングファーガスといった主流とは異なり、ジョーアンドリュースへ連なる傍流の系統に属していました。

1930年、日本の農林省がフランスのバスピレネー県において、85,000フランで購入し、同年中に日本へ輸入されました。翌年の1931年8月には、日本の血統登録が完了しています。その後、北海道浦河町に設置されていた日高種馬牧場にて、国の所有する種牡馬（国有種牡馬）として供用が開始されました。

種牡馬として、バラツケーは非常に優れた成績を残し、多くの活躍馬を輩出しました。特に第二次世界大戦後の日本競馬においては、その産駒の功績が顕著でした。代表的な産駒としては、日本競馬史上において最も重い負担重量（斤量）での勝利記録を保持するタマツバキ、読売盾争奪東西対抗戦という重要なレースを2年連続で制したニユーバラツケー、そして南関東公営競馬の舞台で大きな成功を収めたミネフジなどが挙げられます。

バラツケーの血統は、産駒の活躍に留まらず、さらに下の世代へと受け継がれて、長きにわたり日本のアングロアラブ競馬に影響を与え続けました。代表産駒であるミネフジの子、タガミホマレは、特に傑出した種牡馬であり、1970年代後半から1980年代にかけて、アングロアラブ系種の中央・地方競馬におけるリーディングサイアー（種牡馬成績首位）の座に、実に8回も輝くという偉業を達成しました。

タガミホマレの血は、タイムラインやシナノリンボーといった後継種牡馬によってさらに繋がれました。そして、その血筋は2000年代に入ってもなお、その存在感を示しました。シナノリンボーの産駒で、1990年代前半に上山競馬場で活躍したレオグリングリンの子、マリンレオが、2003年にNARグランプリのアラブ最優秀馬に選出されたのです。さらに、2009年9月27日、福山競馬場で行われた、日本におけるアングロアラブ種単独での最後の競走となった「アラブ特別レジェンド賞」を、同じくレオグリングリンの産駒であるザラストアラビアンが優勝し、バラツケーから始まった血統の歴史に掉尾を飾ることとなりました。

バラツケーは、フランスから遠く離れた日本で、種牡馬としてその能力を遺憾なく発揮し、戦後の日本アングロアラブ競馬の基礎を築くとともに、その血統が何世代にもわたって繁栄を続けた、まさに日本の競馬史における功労馬の一頭と言えるでしょう。

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