バルカンの歴史

バルカン半島の歴史

バルカン半島は、南東ヨーロッパに位置し、多様な民族と文化が交錯する地域です。その歴史は、古代から現代に至るまで、紛争と変革の連続でした。本稿では、バルカン半島の歴史を概観します。

先史時代から古代

バルカン半島には、イリュリア人、トラキア人、ダキア人、マケドニア人などの古代民族が居住していました。彼らは独自の文化を築き、互いに影響を与え合いました。特にマケドニア王国は、アレクサンドロス大王の時代に強大な勢力を誇り、バルカン半島だけでなく、広大な地域を支配しました。

ローマ帝国の支配

紀元前2世紀頃から、ローマ帝国がバルカン半島に進出し、徐々にその支配を確立しました。ローマ帝国の支配下で、バルカン半島は経済的に発展し、都市が建設され、ローマ文化が浸透しました。しかし、4世紀にはゲルマン民族の大移動が始まり、西ゴート族がローマ帝国に侵入するなど、バルカン半島も混乱に巻き込まれました。395年にはローマ帝国が東西に分裂し、バルカン半島は東ローマ帝国の支配下に入りました。

中世

東ローマ帝国（ビザンツ帝国）は、バルカン半島を長く支配しましたが、6世紀頃からスラヴ人が南下し、バルカン半島各地に定住するようになりました。7世紀には、セルビア人やブルガール人などのスラヴ人が国家を建設し、東ローマ帝国と対立しました。また、ヴェネツィア共和国もバルカン半島に進出し、沿岸部の都市を支配しました。

ブルガリア帝国の隆盛と衰退

7世紀に成立した第一次ブルガリア帝国は、9世紀に最盛期を迎え、東ローマ帝国と激しく争いました。しかし、11世紀には東ローマ帝国に征服され、滅亡しました。その後、12世紀に第二次ブルガリア帝国が建国されましたが、14世紀にはオスマン帝国の侵攻を受け、滅亡しました。

セルビア王国の勃興

12世紀にステファン・ネマニャがセルビア侯となり、ネマニッチ朝を開きました。14世紀には、ステファン・ウロシュ4世ドゥシャンが「セルビア人とローマ人の皇帝」を称し、東ローマ帝国の征服を企図しましたが、急死により頓挫しました。

オスマン帝国の支配

14世紀から15世紀にかけて、オスマン帝国がバルカン半島に侵攻し、セルビア王国やブルガリア帝国を滅ぼしました。1453年には、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルが陥落し、東ローマ帝国は滅亡しました。オスマン帝国の支配下で、バルカン半島の多くの人々はイスラム教に改宗し、イスラム文化が浸透しました。

近代

19世紀に入ると、バルカン半島各地でオスマン帝国からの独立運動が活発化しました。ギリシャは1832年に独立を達成し、セルビア、ルーマニア、モンテネグロも1878年のベルリン会議で独立を承認されました。ブルガリアも自治公国として成立しました。

第一次・第二次バルカン戦争

20世紀初頭には、バルカン半島をめぐる列強の対立が激化し、1912年に第一次バルカン戦争、1913年に第二次バルカン戦争が勃発しました。これらの戦争の結果、バルカン半島の領土が再編され、アルバニアが独立を宣言しました。

第一次世界大戦

1914年にサラエヴォ事件が発生し、第一次世界大戦が勃発しました。バルカン半島は戦場となり、多くの犠牲者が出ました。戦後、オーストリア＝ハンガリー帝国が解体され、「セルビア人・クロアチア人・スロヴェニア人王国」（後のユーゴスラビア王国）が成立しました。

現代

第二次世界大戦後、バルカン半島の各国は社会主義体制となりましたが、1980年代末から1990年代初頭にかけて、東欧革命の影響を受け、民主化が進みました。ユーゴスラビアは解体し、スロベニア、クロアチア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナが独立しました。しかし、ユーゴスラビア紛争と呼ばれる民族紛争が勃発し、多くの犠牲者が出ました。

21世紀に入り、バルカン半島の各国は欧州連合（EU）への加盟を目指し、経済改革や民主化を進めています。しかし、民族間の対立や経済格差など、依然として多くの課題を抱えています。

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