バルカン戦線 (第一次世界大戦)

第一次世界大戦中のバルカン戦線は、1914年7月28日から1918年11月11日まで、バルカン半島を舞台に中央同盟国と連合国が繰り広げた激しい戦闘です。この地域は、民族、宗教、政治的な対立が複雑に絡み合い、「ヨーロッパの火薬庫」と称されるほど不安定な状況にありました。第一次世界大戦の直接的なきっかけとなったサラエボ事件も、この地で発生しています。

戦争勃発と初期の戦況

第一次世界大戦の最大の原因は、セルビア王国とオーストリア＝ハンガリー帝国の敵対関係にありました。そのため、大戦初期の戦闘は、両国間で激しく繰り広げられました。セルビア王国は1915年末にオーストリア＝ハンガリー帝国に征服されるまで、1年以上もの間、勇敢に戦い続けました。

アドリア海沿岸のダルマチア（現在のクロアチア）は、イタリア王国とセルビアがオーストリア＝ハンガリー領から奪取しようと狙う戦略的な地域でした。イタリアは、この地域の割譲を保証する1915年4月26日のロンドン秘密協定に同意し、翌月に参戦しました。

ルーマニアとギリシャの参戦

1916年、連合国はルーマニア王国を戦争に引き込むことに成功しましたが、これはルーマニア国民にとって悲惨な結果をもたらしました。ルーマニアは参戦直後、ドイツ帝国、ブルガリア王国、オーストリア＝ハンガリー帝国の3ヵ国からの攻撃を受け、1916年12月には国土の3分の2が占領されてしまいました。しかし、ルーマニアとロシア帝国の軍隊は戦線を安定させ、モルダヴィアを確保しました。

1917年になると、ギリシャ王国も連合国側として参戦しました。翌年には、ギリシャ北部に本部を置くオリエント連合軍が攻勢を開始し、ブルガリアと講和してセルビアを奪還、最終的には1918年11月にハンガリー国境まで進軍しました。

アルバニア戦域

イタリアは、本格的な参戦前の1914年12月に、無政府状態となっていたアルバニア公国のヴロラ港を占領しました。参戦後は、1916年の秋から南アルバニアへと支配地域を拡大しました。イタリア軍は1916年にアルバニアの非正規兵を徴用し、イタリア兵と共に任務を与えました。さらに、連合軍司令部の許可を得て、8月23日には北エピルスを占拠し、中立の立場だったギリシャ軍をそこから撤退させました。

1917年6月、イタリアは中央および南アルバニアを保護国と宣言し、北部はセルビアとモンテネグロ王国の州として割り当てられました。1918年10月31日までには、フランスとイタリアはアルバニアからオーストリア・ハンガリー軍を駆逐しました。11月5日から6日には、イタリア軍がヴィス島やシベニク、ラストヴォなど、ダルマチア沿岸の他の地域に到達したと報告されました。終戦までに、イタリア軍はロンドン秘密協定によって保証されたダルマチアの地域を支配下に置き、11月17日にはリエカも占領しました。この年、エンリコ・ミロ提督は自らイタリアのダルマチア州知事を宣言しました。イタリアの有名なファシストであるガブリエーレ・ダンヌンツィオもダルマチア占領を支持し、12月には軍艦でザダルへ向かいました。

各地における戦闘とその後

この戦線では、他にも様々な戦闘が行われました。セルビア、ブルガリア、ルーマニア、マケドニアといった地域での戦闘は、多くの犠牲者を出し、バルカン半島の情勢をさらに複雑化させました。

イギリスの軍事史研究家ジョン・キーガンによると、ロシア帝国軍の参謀長だったミハイル・アレクセーエフ将軍は、ルーマニア軍を非常に見下しており、彼らはロシアの予備戦力を増やすよりもむしろ消耗させるだろうと主張していました。

キーガンはまた、「暴力的な民族主義者と反トルコ政府のアテネへの設置は、メガリ・イデアの理念においてギリシャ人の動員を引き起こした」と述べています。これは、東方におけるギリシャ帝国の復活を意味し、戦後何年にもわたってヨーロッパの平和を回復しようとする連合国の努力を複雑化させる要因となりました。

第一次世界大戦は、バルカン半島における民族、宗教、政治的な対立を浮き彫りにし、その後の歴史に大きな影響を与えることになりました。

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