バルス・ボラト・サイン・アラク晋王

バルス・ボラト・サイン・アラク晋王：オルドスを統べた英雄の生涯

バルス・ボラト・サイン・アラク晋王（1484年 - 1531年または1490年頃 - 1519年）は、オルドス・トゥメンの晋王（ジノン）として知られています。彼は、ダヤン・ハーンの三男であり、後に強大な指導者となるアルタン・ハーンの父でもあります。彼の名は、バルス・ボロド、バルス・ボラド、バルスボラド、バルスバラドとも表記され、『夷俗記』では賽那剌と記されています。

波乱に満ちた前半生

1484年、バルス・ボラトはダヤン・ハーンの三男として誕生しました。1508年、彼の兄であるウルス・ボラト晋王が右翼のイバライ太師らによって暗殺されるという事件が起こります。当時、バルス・ボラト一家はトゥメト・トゥメンのチェグト部に身を寄せていましたが、オルドス・トゥメンのテムルら7名と共に右翼を脱出し、父ダヤン・ハーンのもとへ逃れました。ダヤン・ハーンはテムルらに称号を与え、右翼三トゥメンに出陣。ガハイ・エレスンの戦い、ダラン・テリグンの戦いで勝利し、ウルス・ボラトの仇を討ちました。

晋王として

1512年、29歳（または23歳）で晋王の位に就き、オルドス・トゥメンを統治しました。1524年にダヤン・ハーンが崩御すると、長男と次男が既に亡くなっていたため、バルス・ボラトは帝位を継承しようとします。しかし、トロ・ボラトの息子であるボディ・アラクがまだ若いことを理由に帝位を譲ろうとしませんでした。これに対し、ボディ・アラクは左翼三トゥメンを率いてバルス・ボラトを激しく叱責し、帝位を要求しました。最終的に、バルス・ボラトはボディ・アラクに帝位を譲り、ボディ・アラクはハーンとなりました。

その後と子孫

1531年、48歳でバルス・ボラトは亡くなり、翌1532年に長男のグン・ビリクが晋王を継ぎました。ただし、近年では1519年に30歳頃で亡くなり、翌1520年にグン・ビリクが晋王を継いだとする説が有力視されています。

バルス・ボラトは、ボダン・ハトンを妻とし、多くの子をもうけました。その中には、オルドス部・トゥメンを領したグン・ビリク・メルゲン晋王、トゥメト・トゥメンを領したアルタン・ハーン、トゥメト・トゥメンのウーシン部を領したラブク太子、ヨンシエブ・トゥメンの七ハラチン部を領したバイスハル・コンデレン・ハーン、チャハル・トゥメンのチャガン・タタル部を領したバヤンダラ・ナリン太子、アスト部とヨンシエブ部を領したボディダラ・オトハン太子、そしてタラハイ太子がいます。特にアルタン・ハーンは、父の跡を継ぎ、モンゴルを代表する英雄の一人として名を残しました。

バルス・ボラト・サイン・アラク晋王は、短い生涯の中で、オルドス・トゥメンの統治者として、また偉大な指導者の父として、重要な役割を果たしました。彼の存在は、モンゴルの歴史において、見逃すことのできない重要な人物です。



参考文献
吉田順一他『アルタン=ハーン伝訳注』（風間書房、1998年、ISBN 4759910824）
岡田英弘訳注『蒙古源流』（刀水書房、2004年、ISBN 4887082436）

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