バーナード・スティーヴンス

バーナード・スティーヴンス（Bernard Stevens）は、1916年3月2日にこの世に生を受け、1983年1月6日に永眠した、20世紀イギリスを代表する作曲家の一人です。彼の生涯と作品は、当時の社会情勢や音楽界の動向を色濃く反映しています。

ロンドンの地で生まれたスティーヴンスは、学問の道に進み、ケンブリッジ大学では著名な音楽学者であるエドワード・ジョセフ・デントのもとで音楽学を探求しました。その後、音楽家としての専門的な技術を磨くため、1937年から1940年にかけて王立音楽大学へ籍を移します。そこでは、作曲をレジナルド・オーウェン・モーリスに、ピアノをアーサー・ベンジャミンに、管弦楽の技術をゴードン・ジェイコブに、そして指揮法をコンスタント・ランバートにと、当時の名だたる師陣から幅広い分野にわたる指導を受け、自身の音楽的基礎を築き上げました。

作曲家としてのキャリアは、初期の作品であるヴァイオリン・ソナタがヴァイオリニストのマックス・ロスタルの注目を浴びたことから勢いづきました。この評価を受け、彼は軍務に就いている最中にもかかわらず、ヴァイオリン協奏曲の作曲を依頼されるという幸運に恵まれます。そして、彼の名を広く知らしめる決定的な出来事が訪れます。第二次世界大戦終結後の1946年、デイリー・エクスプレス紙が主催した「勝利の交響曲」をテーマとする作曲コンクールにおいて、彼の交響曲第1番『解放』が見事に一等賞を獲得したのです。この受賞は、戦後のイギリス音楽界における彼の地位を確固たるものとしました。

スティーヴンスは作曲活動と並行して、教育者としても重要な役割を果たしました。1948年からは王立音楽大学で作曲の教授を務め、さらにロンドン大学でも教鞭を取りました。彼は1967年まで長きにわたり教壇に立ち、多くの若い音楽家たちの育成に尽力しました。

彼の思想的な側面も特筆すべき点です。スティーヴンスはアラン・ブッシュなどとともに、左翼的な立場から音楽活動を展開した音楽家として知られています。共産党員としても活動していましたが、1956年に発生したハンガリー動乱に対するソ連の弾圧に抗議の意思を示すため、党を離れました。その後も、労働者音楽協会などでの活動を通じて、自身の信念に基づいた音楽運動を続けました。

作品群は非常に多岐にわたります。オペラ、2つの交響曲のほか、多数の管弦楽曲、様々な楽器のための協奏曲、室内楽曲、詩に基づいた連作歌曲、単独の歌曲、宗教的なカンタータやモテット、さらには映画音楽など、幅広いジャンルに挑戦しました。彼の音楽語法の特徴は、伝統的な調性を基盤としつつ、当時の前衛的な技法であった十二音技法をも取り入れ、それらを独自の方法で融合させた点にあります。対立しがちなこれらの技法を組み合わせることで、力強く表現豊かな、彼独自の響きを生み出しました。

バーナード・スティーヴンスは、イギリス音楽の歴史において、作曲家、教育者、そして社会的な思想を持った芸術家として、重要な足跡を残しました。彼の作品は今日でも演奏され、研究されています。彼はコルチェスターの地でその生涯を終えました。

もう一度検索