バーナード・スレード

バーナード・スレード（Bernard Slade）は、1930年5月2日にカナダのオンタリオ州セントキャサリンズで生まれ、2019年10月30日に89歳でその生涯を閉じた、カナダを代表する劇作家であり脚本家です。日本での舞台上演時には「バーナード・スレイド」と表記されることもありました。

彼の少年時代は、両親の出身地であるイギリスとカナダの間での度重なる移住に影響を受けました。世界恐慌や第二次世界大戦といった時代の激動が、家族の生活に大きな波をもたらし、その結果、転校を繰り返す不安定な幼少期を送りました。両親の性質もまた、こうした流浪の生活に拍車をかけたようです。

成年後、彼は様々な職業を経験しましたが、最終的には俳優としての道を選びました。1953年に結婚した後、オンタリオ州バインランドに自身の劇場「ガーデンセンター劇場」を開設しましたが、残念ながら短期間で経営は行き詰まり、赤字を出して閉鎖せざるを得ませんでした。

転機が訪れたのは1960年代中頃、ハリウッドに移住し、テレビのシチュエーションコメディ（シットコム）の脚本家として活動を始めたことです。この時期に、彼は世界中で親しまれた人気コメディ番組『奥さまは魔女』の執筆に携わりました。他にも、ニール・サイモンの作品と共通のテーマを扱った『かわいい妻ジュリー』、若い見習い修道女が空を飛ぶという奇抜な設定の『いたずら天使』、実在の音楽一家をモデルにした『パートリッジ・ファミリー』、舞台劇に着想を得た『Bridget Loves Bernie』など、数々のヒット番組を生み出し、テレビ界での地位を確立しました。

テレビでの成功を収めた後、スレードは再び演劇の世界に活動の場を移します。1975年に発表した戯曲『セイムタイム、ネクストイヤー（Same Time, Next Year）』は、既婚者同士でありながら年に一度だけ再会し関係を深めていく男女を描いた作品で、チャールズ・グローディンとエレン・バースティンの主演によりブロードウェイで大成功を収め、1453回もの長期公演を記録しました。この作品はドラマ・デスク賞を受賞し、演劇界最高の栄誉とされるトニー賞の演劇作品賞にもノミネートされています。日本でも鴨下信一演出、小柳ルミ子、角野卓造により上演され、小柳はその後も繰り返しこの役を演じました。

続いて1978年には、自身の子供よりも劇場仲間との生活を優先する俳優を父に持つ男性の葛藤を描いた『Tribute』を発表。ジャック・レモン主演で上演され、212回の限定公演ながら注目を集めました。

1979年には、アンソニー・パーキンスとミア・ファローが出演した『ロマンティック・コメディ（Romantic Comedy）』がヒット。こちらも日本で、加来英治の翻訳・演出のもと、栗原小巻と地井武男の共演で上演されています。

スレードは、これら成功を収めた3つの戯曲全てについて、自身で映画版の脚本も手掛けました。特に『セイムタイム、ネクスト・イヤー』（1979年、ロバート・マリガン監督）の脚本では、アカデミー賞脚色賞と全米脚本家組合賞にノミネートされる栄誉に浴しました。『Tribute』の映画化作品『マイ・ハート マイ・ラブ』（1980年、ボブ・クラーク監督、主演ジャック・レモン）ではジニー賞脚色賞候補となり、『ロマンチック・コメディ』（1983年、アーサー・ヒラー監督）も異なるキャストで映画化されています。

テレビと演劇、双方の分野でコメディと人間ドラマを描き続けたバーナード・スレードは、その晩年も創作意欲を保ちつつ、2019年に永眠しました。彼の作品は、時代を超えて多くの観客に愛され続けています。

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