パイオニア1号

パイオニア1号 (Pioneer 1)

パイオニア1号は、1958年10月11日に、設立されて間もないアメリカ航空宇宙局（NASA）が初めて打ち上げた記念すべき宇宙探査機です。このミッションは、ソー・エイブルと呼ばれるロケットを用いた3回の打ち上げシリーズのうち、2番目の飛行にあたります。月探査を目指していましたが、惜しくも計画通りの軌道には乗れませんでした。

機体設計

探査機本体は、TRW社によって製造されました。構造は、直径74センチメートルの細長い円筒形の中央部に、両端がスカート状に広がった特徴的なデザインをしており、スカート部間の長さは76センチメートルでした。底部には、軌道投入に使用される重量11キログラムの固体燃料ロケットが取り付けられていました。探査機の反対側には、使用後に切り離し可能な8つの小さな速度調整ロケットが環状に配置されていました。通信用の磁気ダイポールアンテナもこの場所に設けられています。機体の外殻は薄いプラスチック製の積層材で作られていました。総質量は34.2キログラムでしたが、軌道投入用ロケットの燃焼・分離後は23.2キログラムになりました。

探査機を宇宙へ運んだのは、3段構成のソー・エイブル打上げ機でした。第1段には改良されたアメリカ空軍のソー中距離弾道ミサイルが、第2段には液体燃料ロケットが、そして第3段にはヴァンガード計画で開発されたものを基にした固体燃料ロケットが用いられました。このロケットは合計で116,500ポンド秒の総力積を持っていました。

探査機の姿勢は、毎秒1.8回転（1.8 Rps）のスピンによって安定させられていました。スピンの方向は、おおむね探査機の軌道面における地球の磁場に対して垂直になるように調整されていました。

搭載機器と通信

パイオニア1号には、合計17.8キログラムの科学観測機器が搭載されていました。主な機器としては、解像度0.5度で月面を観測するための赤外線テレビシステム、宇宙空間の放射線を測定する電離箱、流星塵の衝突を検出するための振動板とマイクロフォン、最大5マイクロガウスという微弱な磁場を観測する磁気センサ、そして探査機内部の温度変化を記録する抵抗器などがありました。これらの機器や探査機の各システムに必要な電力は、ニッケル・カドミウム蓄電池（ロケット点火用）、酸化銀電池（テレビシステム用）、そして水銀電池（その他の回路用）によって供給されました。

地球との通信は、主に108.06メガヘルツ帯で行われました。探査機からのデータ送信には、出力300ミリワットの電気ダイポールアンテナが使用されました。また、テレビシステムからの画像伝送には、より強力な50ワットの磁気ダイポールアンテナが使われました。地上からの管制コマンドは、115メガヘルツ帯で電気ダイポールアンテナによって受信されました。

ミッションの経緯と成果

パイオニア1号は、1958年10月11日午前8時42分（UTC）、フロリダ州ケープカナベラル空軍基地の第17発射施設から打ち上げられました。しかし、打上げロケットの上段ステージにおけるプログラムミスにより、燃焼速度と角度にわずか3.5度のずれが生じました。この僅かなずれが、月へ向かうための正確な軌道投入を妨げ、結果として探査機は月には到達せず、地球を巡る弾道軌道を描くこととなりました。探査機が到達した最高高度は、当初の計画よりはるかに低い約11万3,800キロメートルでした。

探査機は軌道を外れましたが、約43時間にわたって地球近傍の宇宙環境データを地上へ送信し続けました。飛行時間の約75パーセントでリアルタイムでのデータ伝送が可能であり、最初の1時間を除く大部分で良好な信号対雑音比を維持できました。収集されたデータ量は実験ごとに異なりましたが、科学的に非常に価値のある情報が含まれていました。

約43時間の飛行の後、パイオニア1号は1958年10月13日午前3時46分（UTC）に地球の大気圏に再突入し、南太平洋上で燃え尽き、通信が途絶しました。このミッションから回収されたデータは、初期の宇宙科学研究に大きく貢献しました。特に、地球の周囲に放射線帯が存在することを示唆するデータを取得したほか、磁場の磁気流体学的な振動が初めて観測されました。また、惑星間空間における流星塵の密度や磁場の強度についても、この探査機によって初めて具体的な測定値が得られました。パイオニア1号は目標達成には至りませんでしたが、将来の宇宙探査に向けた貴重な経験と科学的知見をもたらした、歴史的なミッションとなりました。

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