パノプロサウルス

パノプロサウルス（Panoplosaurus）は、「完全に装甲したトカゲ」という意味を持つ、ノドサウルス科に属する恐竜の一種です。白亜紀後期、現在の北アメリカ大陸に生息していました。化石はカナダのアルバータ州で発見されており、ノドサウルス科の中でも比較的新しい属の一つと考えられています。

最初の化石は1917年、チャールズ・モートラム・スタンバーグによってリトル・サンドヒル・クリーク近くで発見されました。その後、1919年にローレンス・M・ラムがタイプ種であるPanoplosaurus mirusとして命名しました。属名はギリシャ語の「pan（完璧）」と「hoplon（装甲）」に由来し、種小名はラテン語で「驚くべき」という意味を持ちます。

ホロタイプ標本CMN 2759は、カンパニアン中期（約7600万年前）の地層であるダイナソーパーク累層から発見されました。この標本は、下顎を伴うほぼ完全な頭骨、頚椎、背中の椎骨、肋骨などで構成されています。また、骨質の装甲板（皮骨）の一部も保存されていました。その後、さらに大きな標本が2つ発見され、これらの標本からは頭骨に加えて、肩帯や前肢に関する情報も得られています（ROM 1215、RTMP 83.25.2）。

パノプロサウルスは、体長5.5〜7.5m、尾の長さは約2m、体重は約3.5トンと推定されています。アンキロサウルス科のような尾の棍棒は持っていませんでしたが、背中から尾にかけてプレートが並んだ構造を持ち、他のノドサウルス類と比較しても重装甲でした。首、肩、前肢は楕円形の大きな装甲で覆われており、これらの装甲は外側に突出した稜線を持っていました。肩には他のノドサウルス科に見られるような特徴的な棘はありませんでした。頭部の装甲は頑丈に癒合しており、ヘルメットのような盾を形成していました。これらのプレートはごつごつした表面を持ち、頬にも骨質の鱗甲が存在していました。

頭骨は短く、後部が幅広くなっています。ホロタイプ標本の頭部は特に丸みを帯びていますが、他の2つの標本はより長く、平らであり、これは年齢や性差を反映している可能性があります。吻部は比較的狭く、これは低い植物の根などを掘り起こし、栄養価の高い部分を選んで食べていたことを示唆しています。四肢は太く、大きな筋肉が付着していました。これは、烏口骨が細く肩甲骨と癒合していないにもかかわらず、パノプロサウルスが驚くほど機動的であったことを示唆しており、現代のサイのような防御的な突進も可能だったと考えられます。手にはおそらく3本の指があったと考えられています。骨盤には4つの短い仙肋骨を持つ仙椎が付いていました。

パノプロサウルスは当初、アンキロサウルス科に分類されていましたが、現在では同じ地層から発見されたエドモントニアなどと同様に、ノドサウルス科の一員と考えられています。1971年、ウォルター・クームズはエドモントニアの種をパノプロサウルスの亜属として分類しようと試みましたが（Panoplosaurus (Edmontonia) longiceps、Panoplosaurus (Edmontonia) rugosidens）、この分類は広く受け入れられていません。

パノプロサウルスはその重厚な装甲と特徴的な頭部の構造から、白亜紀後期の北アメリカにおいて独特の生態的地位を占めていたと考えられています。

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