パプアニューギニアの地方

パプアニューギニアでは、「地方」という概念が社会生活において極めて重要な意味を持っています。これは、国の主要な行政単位である22の「州」とは異なる、より広域的な地域区分です。公式な行政区画としての位置づけは限定的ですが、国民の日常生活、社会活動、そして政治の舞台において、その存在感は大きく、人々のアイデンティティや行動様式に深く影響を与えています。

例えば、警察の活動計画、企業の事業展開戦略、地域のスポーツ大会の編成、さらには国家レベルの政治的意思決定に至るまで、「地方」という枠組みが常に意識されています。特に政治においては、誰が首相に選出されたか、次に多くの首相を輩出した地方はどこかといった話題が日常的に議論され、国民の関心を集めています。また、内閣の構成や政府機関の要職への任命においても、各地方からの代表者をバランス良く配置することがしばしば考慮されます。これは、国のガバナンスにおいて特定の地方に権力が集中することを避け、全国的な均衡と多様性を保つための配慮と言えます。

パプアニューギニアの人々は、自分がどの「地方」に属しているかという帰属意識が非常に強く、これが個人のアイデンティティを形成する上で重要な要素となっています。同時に、異なる地方間では強い対抗意識が見られることもあり、これが文化、スポーツ、さらには政治的な側面における地域間の競争や結束を促す原動力ともなっています。

現在、パプアニューギニアには以下の四つの主要な「地方」が存在し、それぞれが独自の地理的、文化的特徴を持っています。

山岳地方 (Highlands Region):
国内の中央部に広がる高地地帯を含む地方です。シンブ州、東部山岳州、エンガ州、ヘラ州、ジワカ州、南部山岳州、西部山岳州がこの地方に属します。
島嶼地方 (Islands Region):
ニューギニア島の周辺に点在する多数の島々から成る地方です。ブーゲンビル州（現在は自治州）、東ニューブリテン州、マヌス州、ニューアイルランド州、西ニューブリテン州が含まれます。
モマセ地方 (Momase Region):
ニューギニア島北部に位置する地方です。その名称は、この地方に含まれる主要な地域名であるモロベ（Morobe）、マダン（Madang）、そしてセピック（Sepik - 東セピック州やサンダウン州を含む広範な地域）の音節を組み合わせた造語とされています。東セピック州、マダン州、モロベ州、サンダウン州がこの地方を構成しています。
パプア地方 (Papua Region):
ニューギニア島南東部、歴史的に「パプア」と呼ばれてきた地域を包含する地方です。中央州、湾岸州、ミルン湾州、オロ州、西部州、そして国の首都が置かれている首都区（National Capital District）がこの地方に属します。

これらの「地方」区分は、単なる地理的な枠組みを超え、パプアニューギニア社会の構造、人々の相互作用、そして国家の運営において、多層的かつ決定的な役割を果たしています。国民のアイデンティティ、地域社会の結束、そして国家レベルの政治的意思決定プロセスを理解する上で、「地方」の重要性は無視できない要素となっています。

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