パンジシール州

パンジシール州：歴史と自然が織りなすアフガニスタンの秘境

パンジシール州は、アフガニスタン北東部に位置し、ヒンドゥークシュ山脈の南麓に広がる渓谷地帯です。州都はバザラックで、面積は3,610平方キロメートル、人口は約17万3千人です。パンジシールという名前は、サンスクリット語またはペルシャ語で「5頭の獅子」を意味するとされています。

地理

パンジシール渓谷は、カーブルの北約150キロメートルに位置し、パンジシール川（カーブル川の支流）が流れています。この渓谷は、その美しい景観と豊かな自然に恵まれており、古くから人々の生活の場として利用されてきました。

歴史

パンジシールは、古くからエメラルドの産地として知られ、古代ローマの博物学者プリニウスもこの地域の宝石について記述を残しています。中世には銀の産出も盛んに行われ、サッファール朝やサーマーン朝によってコインが鋳造されました。

20世紀後半には、ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻に際して、パンジシール渓谷は激戦地となりました。アフマド・シャー・マスード将軍が率いる抵抗勢力は、ソ連軍による複数回の攻勢を退け、谷はソ連軍に制圧されませんでした。マスードは、その後もターリバーンに対抗し、パンジシールはアフガニスタンの中でも特別な場所となりました。マスードは、北部同盟を組織し、その中心拠点としました。この地域は、マスードの死後も彼の支持者たちによって守られ続け、ターリバーンによる支配も免れてきました。

2004年、パンジシール州は、パルヴァーン州から分割され、独立した州となりました。2004年と2009年の大統領選挙では、それぞれユーヌス・カーヌーニーとアブドラ・アブドラが州内で最多得票を得ました。2011年には、ISAF軍からアフガニスタン軍に治安権限が移譲されました。

2021年、ターリバーンがアフガニスタンを掌握すると、マスードの息子であるアフマド・マスードは、アムルッラー・サーレハ第一副大統領とともにパンジシール渓谷で抵抗運動を展開しましたが、最終的にターリバーンは同地を制圧したと発表しました。

住民

パンジシール州の住民の大部分はタジク系で、ダリー語（アフガン・ペルシャ語）が広く使われています。その他、ハザーラ人、ヌーリスターン人などの民族も居住しています。宗教はイスラム教が主流で、スンニ派が多数を占めています。

産業

パンジシール渓谷では、エメラルドと銀の鉱脈が発見されています。特にエメラルドは高品質で知られており、1985年には190カラットの原石が発見されました。これらの鉱物資源は、地域経済において重要な役割を果たしています。

パンジシール州は、その歴史的な背景、地理的な特徴、そして住民の多様性において、アフガニスタンの中でも特異な地域です。その複雑な歴史と豊かな自然は、訪れる人々を魅了し続けています。

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