パース級軽巡洋艦

パース級軽巡洋艦

パース級軽巡洋艦は、イギリス海軍が海軍軍縮時代に建造した軽巡洋艦で、リアンダー級軽巡洋艦の改良型です。全3隻が建造されましたが、最終的にオーストラリア海軍へ貸与されました。

シドニー (HMAS Sydney): 元はフェートン (HMS Phaeton) として建造中にオーストラリア海軍へ移管され、1935年9月に竣工。
ホバート (HMAS Hobart): 元はアポロ (HMS Apollo) として建造され、1938年9月にオーストラリア海軍へ貸与。
パース (HMAS Perth, D29): 元はアンフィオン (HMS Amphion) として建造され、イギリス海軍で運用後、1939年7月にオーストラリア海軍へ貸与。

概要

リアンダー級軽巡洋艦は、第一次世界大戦終結後にイギリス海軍が最初に建造した軽巡洋艦であり、重巡洋艦エクセターを縮小したような艦型でした。パース級は、その改良型として1931年度と1932年度の海軍計画で3隻が追加建造されました。

リアンダー級からの主な変更点は機関構成です。リアンダー級が全缶全機配置で集合煙突だったのに対し、パース級はシフト配置に改められ2本煙突となりました。これにより、被弾時の生存性が向上しています。また、全長が2.4mほど長くなり、煙突の間に航空艤装が配置されました。

当時、オーストラリア海軍の主力艦はケント級重巡洋艦2隻（オーストラリア、キャンベラ）と軽巡洋艦アデレードでした。イギリスは建造中のパース級をオーストラリア海軍に貸与することとなり、フェートンがシドニーと改名されオーストラリア海軍で竣工しました。シドニーは、老朽化したチャタム級軽巡洋艦ブリスベンの代艦として配備されました。

第二次世界大戦序盤、シドニーは地中海戦域に派遣され、スパダ岬沖海戦やオトラント海峡海戦などで活躍しました。その後、ドイツ海軍の仮装巡洋艦コルモランとの戦闘で相討ちとなり沈没。パースはバタビア沖海戦で日本海軍の水雷戦隊との夜戦で沈没。ホバートは日本海軍の潜水艦の雷撃により大破しましたが、機関配置の改善により沈没を免れました。

艦形

船体は乾舷の高い長船首楼型で、艦首側面には凌波性を高めるための強いフレア（反り返り）が設けられていました。艦首甲板には15.2cm連装砲塔2基が背負い式に配置され、2番主砲塔の基部から上部構造物が始まり、その上に操舵艦橋と単脚式の前部マストが立っていました。

船体中央部には前後に離された2本煙突があり、その間に航空施設（カタパルト1基）が設置されていました。10.2cm高角砲は2番煙突の後方に片舷2基ずつ配置され、煙突の間隔が広がったことで射界が拡大しました。対空砲座の下には53.3cm魚雷発射管が四連装で片舷1基ずつ装備されていました。

高角砲の配置変更に伴い、艦載艇置き場は1番煙突側面に移動し運用スペースが広がりました。舷側にはボート・ダビッドが片舷3組ずつ計6組設けられていました。2番煙突後方には露天の後部見張所と単脚式の後部マストが立ち、後部甲板には4番主砲塔が配置されました。船体舷側部には、復元性と水雷防御のため広範囲にバルジが装着されていました。

就役後の外観の変化

1938年にホバート、1939年にパースが10.2cm単装高角砲4基を撤去し、新型の10.2cm連装高角砲4基に更新しました。1939年中に全ての艦で4.7cm高射砲4基が撤去されました。

パースは1939年にカタパルトを新型に交換し、水上機もシーガルIIに変更しましたが、1941年2月に航空施設を撤去し4cmポンポン砲4基を追加、同年7月に航空施設を復活させ、2cm機関砲4基に更新しました。1941年にはシドニーもエリコン2cm単装機銃1基を追加しました。

1942年にホバートは新型レーダー272型を搭載し、対空火器の更新が行われました。12.7mm四連装機銃3基を撤去し、4cmポンポン砲を連装砲架で4基、エリコン2cm機関砲を連装砲架で5基、単装砲架で1基を追加、航空施設は撤去されました。1945年1月にはレーダーが更新され、エリコン2cm連装機銃が撤去、ボフォース4cm機関砲が搭載されました。1946年6月には主砲塔1基を撤去し、ボフォース4cm機関砲を四連装砲架で2基追加しました。

兵装

主砲

アームストロング Mark XXI 15.2cm（50口径）速射砲を連装砲塔に収めて4基搭載。射程は23,300m、11,430mで76mmの舷側装甲を貫通可能でした。俯仰能力は仰角60度・俯角5度、旋回角度は左右150度、発射速度は毎分6発程度でした。

備砲、魚雷兵装

Mark V 10.2cm（45口径）高角砲を単装砲架で4基8門搭載。射程は15,020m、最大仰角で9,450mの高度まで到達可能でした。俯仰は仰角80度、俯角5度で発射速度は毎分10～15発でした。

近接火器としてヴィッカーズ 12.7mm（62口径）機関銃を四連装砲架で3基搭載。他に53.3cm魚雷発射管を四連装で片舷1基ずつ計2基装備しました。

就役後の武装変換

第二次世界大戦の戦訓から、対空火力不足を補うため、アームストロング MkXVI 10.2cm（45口径）高角砲に更新。4cmポンポン砲やボフォーズ4cm機関砲、エリコン2cm機関砲も搭載されました。

機関

アドミラリティ三胴式重油専焼水管缶4基とパーソンズ式オール・ギヤードタービン4基を搭載し、最大出力72,000shpを発揮。公試で32.25ノット、最大速力31.0ノットを発揮しました。機関配置はシフト配置で、煙突は2本でした。

防御

パース級はエクセターをタイプシップとしており、重巡洋艦を超える防御力を持っていました。舷側防御は機関区のみ102mmで、末端部はテーパー状。弾薬庫は側盾が98mm、前後隔壁が38mm、天蓋が25mmでした。缶・機分離配置により抗堪性を向上させました。

同型艦

パース (HMAS Perth): 旧アンフィオン。1942年3月1日、バタビア沖海戦で戦没。
ホバート (HMAS Hobart): 旧アポロ。1953年練習巡洋艦に改装を開始、1956年改装中止となり1962年に解体。
シドニー (HMAS Sydney): 旧フェートン。1941年11月19日、ドイツ海軍の仮装巡洋艦コルモランと交戦、相討ちとなって沈没。

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