パートソング

パートソングとは

パートソング（part song）は、合唱のために書かれた楽曲の形式の一つであり、特に世俗的な主題を扱います。この形式の楽曲は、多くの場合、伴奏楽器を用いずに声楽のみで演奏される、いわゆるア・カペラの形態が意図されています。

音楽的な構造としては、対位法的な技法を多用するマドリガーレなどとは異なり、主にホモフォニックなスタイルを特徴としています。これは、最も高い声部が旋律を担当し、それ以外の声部が和声的な響きを提供することで主旋律を支えるという形態です。パートソングの編成は、混声合唱のために書かれることが多いですが、男声合唱や女声合唱のために作曲された作品も存在します。

イギリスでの発展

パートソングは、特にイギリスにおいて独自の発展を遂げたジャンルです。その歴史は、先行する合唱形式であるグリーと深く関わっており、次第にパートソングがグリーに取って代わる形で普及していきました。このジャンルの成立と発展には、ドイツの作曲家フェリックス・メンデルスゾーンの合唱作品が大きな影響を与えたとされています。

また、19世紀後半のイギリスにおける合唱活動の隆盛も、パートソングの普及に貢献しました。この時期には、小規模なグリークラブよりも大きな規模を持つ合唱協会が数多く設立され、これらの団体が演奏するためのレパートリーとしてパートソングが盛んに作曲されるようになりました。

主な作曲家と作品

イギリスにおけるパートソングの初期の作曲家としては、リチャード・スティーヴンスやヘンリー・スマート、そしてウィリアム・シェイクスピアのテキストに作曲したことで知られるマクファーレンなどが挙げられます。

パートソングは20世紀への転換期に最盛期を迎えます。この時期には、チャールズ・ヒューバート・パリー、チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード、そしてエドワード・エルガーといった作曲家たちが中心となり、同時代または過去の優れたイギリス詩、特に詩的な価値の高い作品にインスピレーションを得た、しばしば厳粛な雰囲気を持つ楽曲を数多く生み出しました。

さらに時代が下ると、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ、グラヴィル・バントック、アーノルド・バックス、グスターヴ・ホルスト、ベンジャミン・ブリテンなども、このジャンルに重要な作品を残しています。これらの作曲家によって、パートソングの表現はより多様化し、形式的な複雑さを増すとともに、初期にはあまり見られなかった対位法的な要素も取り入れられるようになりました。

現代への継承

現代においても、パートソングの技法は活かされています。特にイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドといった地域に伝わる伝統的な民謡を合唱用に編曲する際に、パートソングの要素が効果的に用いられる例が見られます。

代表的なパートソングとしては、リチャード・スティーヴンスによる「Ye spotted snakes」（シェイクスピア詩）、マクファーレンの「Orpheus with his lute」（シェイクスピア詩）、アーサー・サリヴァン作曲の「The Long Day Closes」（ヘンリー・チョーリー詩）、ロバート・ルーカス・ピアサルの「Lay a garland」などがあります。最盛期の作品では、エルガーによる「O wild west wind」（パーシー・ビッシュ・シェリー詩）がよく知られています。また、ヴォーン・ウィリアムズは「Three Shakespeare Songs」（シェイクスピア詩）や、スコットランド民謡を合唱編曲した「Loch Lomond」といった重要なパートソングを残しています。

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