ヒスパニア・タラコネンシス

ヒスパニア・タラコネンシス

ヒスパニア・タラコネンシスは、ローマ帝国の属州の一つであり、皇帝属州として重要な位置を占めていました。現在のスペインの大部分（バレンシア地方、ガリシア地方、カタルーニャ地方など）とポルトガル北部に相当する地域を包括していました。地理的には、南にルシタニア（現在のポルトガル南部）、ヒスパニア・バエティカ（アンダルシア地方）、北にはガリア・アクィタニアとガリア・ナルボネンシス（現在のフランス西部）と接していました。

歴史

この地域は、ローマが影響力を持つ以前は、イベリア人が先住民族として居住していました。紀元前8世紀から紀元前6世紀にかけては、フェニキア人が地中海沿岸に植民市を建設し、交易拠点として利用していました。

ローマがこの地域に進出したのは紀元前2世紀頃です。当初、ローマはカルタゴとの間でエブロ川以西には進出しないという協定を結んでいました。しかし、第二次ポエニ戦争後、ローマはイベリア半島の南部を支配下に置き、共和政後期には南西部をヒスパニア・ウルテリオル、南東部をヒスパニア・キテリオルとしてローマの属州に加えました。

アウグストゥスの時代になると、ローマはイベリア半島をほぼ制圧し、ローマ領の再編が行われました。紀元前27年、この地域はヒスパニア・タラコネンシスと名付けられ、属州都はタラコ（現在のタラゴナ）に置かれました。これにより、ヒスパニア・タラコネンシスはローマ帝国の重要な一部分として組み込まれることとなりました。

イベリア半島北部は当初ローマの支配下にはありませんでしたが、紀元前29年から紀元前19年にかけてカンタブリ人が抵抗しました。彼らの抵抗を鎮圧した後、ローマはこの地域を編入し、ヒスパニア・タラコネンシスの管轄下に置きました。

69年の四皇帝の年には、ヒスパニア・タラコネンシスを治めていた総督ガルバが皇帝に擁立され、短期間ではありますがローマ皇帝に即位しました。この出来事は、ヒスパニア・タラコネンシスがローマ帝国内で重要な役割を果たしていたことを示しています。

ディオクレティアヌスの治世には、ヒスパニア・タラコネンシスはガッラエキア、ヒスパニア・カルタギネンシスと分割されました。その後、407年以降にはカンタブリ人やバスク人が反乱を起こし、西ゴート人がピレネー山脈を越えて侵入し、この地域は西ゴート王国の領土となりました。これにより、ヒスパニア・タラコネンシスとしての歴史は終焉を迎えることになります。

脚注

World of the Imperium Romanum: Hispania
Detailed Map of Pre-Roman Peoples in Iberia (around 200 BC)
Historical Outline of the Roman conquest of Hispania and the Province of Tarraconensis
Spanish site dedicated to Roman technology, especially aqueducts and mines
Bagnall, R., J. Drinkwater, A. Esmonde-Cleary, W. Harris, R. Knapp, S. Mitchell, S. Parker, C. Wells, J. Wilkes, R. Talbert, M. E. Downs, M. Joann McDaniel, B. Z. Lund, T. Elliott, S. Gillies. “Places: 991326 (Tarraconensis)”. Pleiades. March 8, 2012閲覧。

関連項目

* 皇帝属州

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