ヒューマン (ゲーム会社)

ヒューマン株式会社：日本のゲーム業界に名を刻んだ企業の軌跡

1983年5月、日本のゲーム業界に新たな企業が誕生しました。それが、ヒューマン株式会社です。鈴木長四郎氏率いる少数精鋭の開発チームによって設立された同社は、主にファミリーコンピュータ向けゲームソフトの受託開発からスタートしました。その後、自社ブランドタイトルの開発へと進出し、日本のゲーム史に輝く数々の名作を生み出していくことになります。

輝かしい成功と隆盛

1989年6月、ヒューマンは初の自社ブランドタイトル『ファイヤープロレスリング コンビネーションタッグ』をリリース。これが大ヒットを記録し、続く『フォーメーションサッカー』シリーズと合わせて、ヒューマンの2大看板タイトルとして確固たる地位を築きました。

さらに、ホラーアドベンチャーゲームの『クロックタワー』シリーズや『トワイライトシンドローム』シリーズも高い人気を博しました。特にスーパーファミコン用ソフト『セプテントリオン』『ザ・ファイヤーメン』『クロックタワー』では、「シネマティックライブ」と呼ばれる、映画やライブのような迫力と臨場感を演出する独自のシステムを採用し、高い評価を獲得しました。

アーケードゲーム分野にも進出し、独自の技術開発にも注力。性格診断ゲーム装置や2人用ゲーム装置に関する特許を取得するなど、技術革新にも積極的に取り組んでいました。また、技術研究所では統合型3Dマルチメディアオーサリングシステム「Digital Loca」を開発するなど、先進的な技術開発にも意欲的に取り組んでいました。1999年には不動産販売会社の大京と共同で眺望シミュレーションソフトを開発するなど、ゲーム以外の分野にも進出を図っていました。

急転直下：事業撤退と倒産

しかし、1998年にアーケードゲーム事業から撤退したことが、ヒューマンにとって大きな転換点となりました。この撤退に伴う大幅な赤字が、経営を圧迫。1999年11月には37億900万円もの負債を抱え、東京地裁八王子支部に和議を申請。事実上、倒産という事態に陥りました。

ゲームソフト事業からの撤退と専門学校事業への経営転換も検討されましたが、2000年1月には再建を断念。和議を取り下げ、破産手続きへと移行しました。

ヒューマンクリエイティブスクールの歴史

ヒューマンは、1990年に「ヒューマンクリエイティブスクール」を開校しました。世界初のゲームクリエイター養成専門学校として知られ、多くのゲーム業界のプロフェッショナルを育成しました。ヒューマンの社員が講師を務めることも多く、バンダイやNECホームエレクトロニクスとの共同出資による学校へのクリエイター供給など、業界に大きな影響を与えました。

卒業制作発表では優れた作品が「学生作品商品化プロジェクト」として製品化され、『エジプト』『ドラゴンズ・アース』『セプテントリオン』『ザ・ファイヤーメン』といったタイトルが誕生しました。1999年にはインターネット通信教育「HUMAN Multimedia Network School」も開始し、時代の変化に対応した教育体制を整えていました。

しかし、2000年1月にドッドウエル ビー・エム・エスに経営権が譲渡され、「パソナソフトバンク クリエイティブスクール」へと名称変更。その後も校名変更を経て、2003年3月に閉校となりました。

ヒューマンの遺産

ヒューマンの主要タイトルの権利はスパイクが取得し、多くの開発スタッフはスパイクの子会社であるヴァイル株式会社（後にスパイクに吸収合併）に移籍しました。彼らは、『ファイヤープロレスリング』シリーズ、『トワイライトシンドローム』シリーズ、『爆走デコトラ伝説』シリーズなどの開発を継続し、ヒューマンの遺伝子を現代のゲーム業界に繋いでいきました。

ヒューマンは短命に終わったものの、数々の名作を生み出し、多くのゲームクリエイターを育成した、日本のゲーム業界に大きな足跡を残した企業として記憶されています。その功績は、今もなお多くのファンに語り継がれています。

関連会社・出身者

ヒューマンは、ヒューネックス株式会社や株式会社ベックといった関連会社を設立。また、河野一二三氏、志倉千代丸氏、須田剛一氏など、多くのゲーム業界で活躍する著名なクリエイターを輩出しました。これらの出身者たちは、グラスホッパー・マニファクチュア、シャンダー、サンドロット、ヌードメーカー、5pb.（現MAGES.）といった企業を設立し、日本のゲーム業界に多大な貢献を果たしています。

ヒューマンの歴史は、日本のゲーム業界発展の重要な一コマとして、これからも語り継がれていくでしょう。

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