ヒースロー・エアポート・ホールディングス

ヒースロー・エアポート・ホールディングス（Heathrow Airport Holdings Limited）は、ロンドン・ヒースロー空港をはじめとする、イギリス国内の主要な4つの空港を運営する民間企業です。

歴史

この会社の前身は、1965年にイギリス政府が全額出資して設立した英国空港運営公団（British Airports Authority）です。翌1966年には、ヒースロー空港、ガトウィック空港、ロンドン・スタンステッド空港、プレストウィック空港の4つの空港の所有権が政府から移管され、公団による運営が始まりました。

その後、1971年にはエディンバラ空港が、1975年にはアバディーン空港とグラスゴー国際空港がそれぞれ政府やグラスゴー市から移管され、運営下に加わりました。

1980年代に入り、マーガレット・サッチャー政権の国営事業民営化政策の一環として、1985年に発表された『空港政策白書』で公団の民営化が明確に打ち出されました。同年12月には、公団の資産と負債をすべて引き継ぐ形で、BAA plcとして民営化が実現し、1987年にはロンドン株式市場に上場を果たしました。

1990年にはサウサンプトン空港を買収しましたが、1992年にはプレストウィック空港を売却しました。2006年には、スペインの大手建設会社フェロビアルを中心とするコンソーシアムに買収されたため、同年8月に上場廃止となり、社名もBAA Limitedに変更されました。その後、2012年10月には現在の社名であるヒースロー・エアポート・ホールディングスに改称されました。

経営

民営化に際して、イギリス政府は約12.6億ポンド（当時のレートで約2,800億円相当）の国庫収入を得ました。BAAは、空港内のショッピングモール事業などを積極的に展開することで、運営する空港において世界的に見ても低価格の着陸料を実現しています。

また、BAA時代には、アメリカ法人を設立し、インディアナポリス国際空港の全運営を請け負ったり、ピッツバーグ国際空港の商業施設の運営に携わったりするなど、海外での事業展開も行っていました。

これらの企業努力により、株式公開時の時価総額は約12億ポンドでしたが、2000年代初頭には60億ポンド以上（1兆円以上）にまで膨らみ、空港民営化の成功事例として世界的に注目されるようになりました。この成功は、ヨーロッパ各国における空港の民営化を促し、デンマークのコペンハーゲン空港公団、オーストリアのウィーン空港公団の民営化、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチ空港を運営するローマ空港会社の誕生などにも影響を与えました。日本においても、新東京国際空港公団の民営化のモデルの一つになったと言われています。

ヒースロー空港やガトウィック空港など、旅客取扱量の多い空港を独占的に運営しているため、不当な着陸料、駐機料、旅客取扱料の設定を防ぐことを目的に、プライス・キャップ制度が導入されています。また、空港施設の独断的な売却を防ぐために、イギリス政府は黄金株を1株保有していましたが、2003年に欧州司法裁判所によってEC条約違反と判断されたため、同年中に黄金株は消却されました。さらに2004年には定款が変更され、一人当たりの株式保有数の制限（15％）が撤廃されました。

関連項目

イギリスの企業

外部リンク

Heathrow:Corporate site（英語）

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