ビイェリナ

ビイェリナ：ボスニア・ヘルツェゴビナ、スルプスカ共和国の都市

ビイェリナは、ボスニア・ヘルツェゴビナを構成するスルプスカ共和国に属する都市です。スルプスカ共和国の北東部に位置し、同共和国ではバニャ・ルカに次ぐ第2の都市規模を誇ります。ボスニア・ヘルツェゴビナ全体でも5番目に大きな都市として知られています。

地勢と産業

ビイェリナは、肥沃なセンベリヤ平原に位置しており、農業が非常に盛んです。スルプスカ共和国内でもっとも農業が発展している地域であり、ビート、トウモロコシ、各種野菜（キャベツ、トマト、スイカなど）、牛の繁殖、果物の生産が盛んに行われています。また、非公式ながらスルプスカ共和国東部の行政的な中心都市としての役割も担っており、人口は約12万人から13万人です。セルビアとの国境から6キロメートル、クロアチアとの国境からは40キロメートルという地理的な条件から、工業や食品取引の中心地としても発展しています。町の中心部には広大な中央広場があり、都市公園として美しい景観を形成しています。

歴史

ビイェリナ周辺における人々の生活の痕跡は、紀元前5000年から紀元前3000年の新石器時代にまで遡ります。新石器時代、青銅器時代、鉄器時代の遺物が発見されており、この地域が古くから人々に利用されていたことが伺えます。スラヴ人がこの地域に定住し始めたのは7世紀頃のことです。ビイェリナという地名が最初に記録されたのは1446年のことですが、現在のビイェリナという名称が使われるようになったのは1918年以降のことです。オーストリア＝ハンガリー帝国時代には、ベリナ（Belina）やビリナ（Bilina）という地名が用いられていました。

1838年には最初の小学校が開校し、1902年には現代的な校舎が建てられました。1893年から1895年にかけては、ヘルツェゴビナ出身の著名なセルビア人作家、詩人、外交官であるヨヴァン・ドゥチッチが教鞭を執っていました。現在、ビイェリナの中央にある通りは彼の名にちなんで名付けられています。市庁舎の前には、1903年から1918年までセルビア王国の国王であったペタール1世の像が建てられていましたが、第二次世界大戦中にウスタシャによって取り去られました。戦後、ユーゴスラビア政府は像の再建を拒否しましたが、1990年代前半に成立した政府によって元の場所に再建されました。ユーゴスラビア社会主義連邦共和国時代には、ビイェリナは経済的、文化的に大きく発展し、多くの工場、学校、医療施設、文化施設などの社会資本が整備されました。

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

1991年から1992年にかけて、ビイェリナは北東ボスニアセルビア人自治地域（Srpska autonomna oblast Severo-Istočna Bosna）の中心地でした。戦略的に重要な場所であったため、紛争の初期段階で戦火に巻き込まれることとなりました。1992年4月、ジェリコ・ラジュナトヴィッチ率いるセルビア系の準軍事組織が町を攻撃し、当時の報道によれば約100人が殺害され、非セルビア系の住民は町から追放されました。これは、ボスニア・ヘルツェゴビナで行われた最初の民族浄化と言われています。ビイェリナが最初に攻撃されたのは、ボスニア北東部の要に位置し、セルビアとの国境に近いため戦略的に重要であったためと考えられています。紛争中、ビイェリナにはボスニア・ヘルツェゴビナの他の地域からの難民が多数流入しました。

人口構成

1991年の国勢調査によると、ビイェリナ自治体の人口は96,796人でした。民族別の内訳は以下の通りです。

セルビア人 - 57,541人（59％）
ボシュニャク人 - 30,314人（34%）
クロアチア人 - 517人
その他 - 4,168人

2005年の調査では、自治体内の人口は約105,000人と推定されています。紛争時に他の地域からセルビア系の住民が多数流入したことが、人口構成に影響を与えています。

教育

ビイェリナに最初に初等学校が開校したのは1838年のことです。第二次世界大戦後、学制が変わり、1951年に最初の小学校が開校し、5年後にもう1校開校しました。その後、1959年と1966年にそれぞれ3番目、4番目の小学校が開校しました。1953年からは基礎音楽学校も設立されています。現在、ビイェリナには音楽学校、農業学校、経済学校、技術学校などの高等教育機関に加え、複数の大学が立地しており、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける教育の中心都市としての役割を担っています。

交通

ビイェリナの公共交通機関は主に路線バスで、周辺の村と市中心部がバス路線網によって結ばれています。町の中心部にあるバスターミナルからは、ボスニア国内の他の都市や地域、さらにはヨーロッパの他の国々へ向かう長距離バスが運行されています。鉄道路線は1路線のみで、セルビアのシドに通じており、シドからはベオグラード方面やクロアチア方面への接続が可能です。

みどころ

ビイェリナでは様々なイベントが開催されますが、中でも有名なのはセンベリヤフォルクフェストとして知られる国際フォルクローレフェスティバルです。このフェスティバルは毎年4月から8月にかけて開催され、伝統的なフォルクローレを尊重し、世界中に広めることを目的としています。フェスティバルのマスコットはハリネズミで、これは良い仲間のシンボルとされています。また、ビイェリナにはドヴロヴィスパという、スルプスカ共和国内でもっとも有名な温泉があります。この温泉は1957年に石油探査中に熱水が発見されたことによって形成されました。源泉は深さ1,435メートル、温度は75℃で、豊富なミネラル分を含んでいます。温泉施設周辺にはホテルなどの宿泊施設も整備されています。

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