ビル・ワット

ビル・ワット：アメリカンフットボールからプロレス界の帝王へ

ビル・ワット（本名：ウィリアム・ワット、1939年5月5日-）は、アメリカ合衆国を代表するプロレスラーにして、成功したプロモーターです。オクラホマ州オクラホマシティ出身。 カウボーイ・ギミックを身につけ、大型ファイターとして1960～70年代に活躍しました。

華々しいレスラーとしてのキャリア

オクラホマ州立大学ではアメリカンフットボール選手として活躍した後、AFL、NFLを経て1962年秋、プロレスラーに転身。 才能はすぐに開花し、1963年にはNWAテキサス・ヘビー級王座を獲得、翌年にはルー・テーズのNWA世界ヘビー級王座に挑戦するなど、早くからトップ選手としての地位を確立しました。

その後、WWWF（後のWWE）ではブルーノ・サンマルチノと対戦。当初は善玉レスラーとして活躍していましたが、サンマルチノとのタッグマッチでサンマルチノへのタッチを拒否するなど、悪役レスラーへと転向します。 1965年には、マディソン・スクエア・ガーデンで3ヶ月連続でサンマルチノに挑戦するなど、大舞台で活躍しました。 また、ゴリラ・モンスーンとのタッグチームでは、WWWF USタッグ王座を獲得するなど、タッグ戦線でも成功を収めています。

サンフランシスコ地区ではUSヘビー級王座を獲得。 1967年には日本プロレスに初来日し、ターザン・タイラーとのタッグでインターナショナル・タッグ王座を獲得したものの、すぐにタイトルを失っています。この来日、そしてBI砲（馬場と猪木）との対戦は、日本のプロレスファンにとって印象的な出来事となりました。

1970年代には、オクラホマを拠点とするNWAトライステート・プロモーションで活躍。 NWA北米ヘビー級王座を6回獲得するなど、地元のトップレスラーとして君臨しました。 フロリダ、ジョージアなど他の地区にも参戦し、悪役レスラーとして活躍する一方、NWA世界ヘビー級王座にも挑戦しました。1974年には国際プロレスに再来日し、ストロング小林と対戦しました。

プロモーターとしての成功と苦悩

長年ブッカーを務めたトライステート・プロモーションを1979年に離れ、独立団体MSWA（ミッドサウス・レスリング・アソシエーション）を設立。 ルイジアナ、ミシシッピ、アーカンソー、オクラホマをテリトリーとし、トライステートの多くのレスラーを引き抜き、成功を収めます。 1982年にはトライステート・プロモーションを完全に吸収合併。さらにテキサスにも進出し、ニューオーリンズのルイジアナ・スーパードームで定期的に大規模イベントを開催するなど、事業を拡大しました。

1980年代半ば、WWFの全米侵攻が始まると、多くのプロモーションが苦境に陥りますが、MSWAは独立団体として独自の路線を貫き、WWFに屈することなく活動を続けました。 TBSと放送契約を結び、高視聴率を獲得するなど、大きな成功を収めます。

しかし、TBSでの放送枠を獲得できず、1986年には団体名をUWF（ユニバーサル・レスリング・フェデレーション）と改称。全米進出を目指しますが、コスト増大やミッドサウス地区の経済不況により、経営は悪化。1987年には400万ドルでジム・クロケット・ジュニアにUWFを売却し、プロレス界から撤退しました。

WCWでの活動とその後

その後はマーケティング関連の仕事に就いていましたが、1992年にWCWの副社長としてプロレス界に復帰。 しかし、人種差別発言や選手との不和などから、1993年に辞任。 1995年には息子のエリック・ワットをWWFに斡旋したと言われています。 2009年にはWWE殿堂入りを果たしました。

ビル・ワットの人物像

ビル・ワットは、成功したプロモーターである一方、人種差別主義者として知られています。しかし、ミッドサウス地区では黒人レスラーを積極的に起用するなど、複雑な人物像を持っています。 徹底した共和党支持者であり、太平洋戦争で父親を亡くしたことが、日本への負の感情につながったという説もあります。

功績と影響

ビル・ワットは、アメリカンフットボール選手からプロレスラー、プロモーターへと転身し、成功を収めた稀有な存在です。 独立団体を設立し、独自の路線を歩んだことで、後のプロレス界に大きな影響を与えました。 その功績は、WWE殿堂入りという形で認められています。 一方で、人種差別問題や複雑な人間性も、彼の生涯を語る上で無視できない要素です。 彼の生涯は、成功と挫折、そして葛藤に満ちたドラマチックな物語であり、プロレス界の歴史に大きな足跡を残しました。

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