ビレチャの戦い

ビレチャの戦い：ボスニア王国がオスマン帝国に勝利した戦い

ビレチャの戦いは、1388年8月にボスニア王国とオスマン帝国の間で繰り広げられた重要な戦いです。ヴラトコ・ヴコヴィチ大公率いるボスニア王国軍が、ララ・シャヒーン・パシャ率いるオスマン帝国軍を打ち破り、ボスニア王国に勝利をもたらしました。

背景

14世紀後半、オスマン帝国はバルカン半島への影響力を強めていました。ムラト1世はマケドニアの領主たちを従属させ、アドリア海沿岸まで軍を派遣するようになります。しかし、当時のボスニア王国はオスマン帝国から地理的に離れており、セルビア帝国崩壊後の混乱もあって、比較的安全な地域と考えられていました。

しかし、ボスニア王スティエパン・トヴルトコ1世が、オスマン帝国の属国であるゼタ公国の支配者ジュラジ2世バルシッチと対立したことで、オスマン帝国の侵攻を招くことになります。1388年、ジュラジ2世はオスマン帝国の将軍ララ・シャヒーン・パシャに働きかけ、スティエパン・トヴルトコ1世を攻撃させようとしました。

オスマン帝国の侵攻

1388年8月、オスマン帝国軍はボスニア王国に侵攻しました。ムラト1世はララ・シャヒーン・パシャを派遣し、ジュラジ2世を支援させようとしました。オスマン軍がボスニア王国のすぐ南にあるザクルミアに侵入したため、近隣のラグサ共和国はジュラジ2世に懸念を表明しました。ラグサは侵略を避けて逃げてきたボスニアの住民を受け入れ、貴族と庶民をドゥブロヴニクとストンの島に避難させることを決定しました。

オスマン帝国軍の規模は不明ですが、ムラト1世が自らの子を軍に加えていることから、相当な規模であったと考えられています。遠征の目的は、ボスニアを略奪し、ムラト1世の武威を示すことでした。

戦闘

ボスニア王国軍は、オスマン帝国軍をビレチャまで誘い込みました。そして、ザクルミア峡谷でオスマン軍に奇襲をかけ、決定的な勝利を収めました。ララ・シャヒーン・パシャは、わずかな部下とともに辛うじて逃げ延びることができました。戦いが起きた正確な日付については諸説ありますが、1388年8月26日頃と考えられています。

その後

オスマン帝国軍の敗北後、スティエパン・トヴルトコ1世とジュラジ2世バルシッチは関係を修復しました。しかし、オスマン帝国による周辺諸国への侵攻は止まりませんでした。ボスニアはビレチャでの勝利後、約1年間はオスマン帝国の攻撃を受けませんでしたが、1389年6月にはムラト1世自らが軍を率いて西進してきました。ムラト1世はスティエパン・トヴルトコ1世を打ち破ることを目指していましたが、同時に、セルビア公国の支配者ラザル・フレベリャノヴィチがビレチャでボスニア王国に協力したのではないかと疑っていました。この結果、ボスニアとセルビアは共同でオスマン帝国に抵抗することになり、コソボの戦いが勃発することになります。

ビレチャの戦いは、オスマン帝国のバルカン半島侵攻に対するボスニア王国の抵抗を示す重要な出来事でした。この勝利は、後のコソボの戦いへと繋がる重要な出来事となりました。

参考文献

Imber, Colin (2009). The Ottoman Empire, 1300–1650: The Structure of Power. Palgrave Macmillan.
Finkel, Caroline (2007). Osman's Dream: The History of the Ottoman Empire. Basic Books.
Ćirković, Sima (1964) (Serbo-Croatian). Историја средњовековне босанске државе. Srpska književna zadruga
Fine, John Van Antwerp, Jr. (1994), The Late Medieval Balkans: A Critical Survey from the Late Twelfth Century to the Ottoman Conquest, University of Michigan Press
Veinstein, Gilles (2013), “The Great Turk and Europe”, Europe and the Islamic World: A History (Princeton University Press)
Ćorović, Vladimir (2001). Istorija srpskog naroda. Janus.

関連項目

* プロシュニクの戦い

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