ピアノ協奏曲第1番 (リスト)

フランツ・リスト：ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124/R.455

概要

フランツ・リストが1830年代から1856年にかけて作曲したピアノ協奏曲第1番変ホ長調は、彼のピアノ協奏曲の中でも特に重要な作品です。リストは若い頃にも2曲のピアノ協奏曲を作曲していますが、それらは楽譜が紛失しており、この協奏曲が実質的に最初の完成作とみなされています。この作品は、リストの創造的な思考とピアノ演奏技巧が融合した、ロマン派音楽を代表する傑作の一つです。

作曲の経緯

この協奏曲の着想は1830年代に遡り、スケッチ帳には第1楽章の冒頭主題と終楽章の行進曲風の主題が既に記されていました。1835年には初稿が完成しましたが、その後リストは大幅な改訂を重ねています。初稿は3楽章構成でしたが、後に単一楽章形式に変更されました。1839年には改訂版が完成しましたが、リストの演奏活動のために中断し、1846年に再開されました。最終稿は1849年7月に完成し、1853年に再改訂、初演後の1856年にも更なる推敲が加えられ、現在の形になりました。

初演と評価

初演は1855年2月17日、ヴァイマルの宮廷にてエクトル・ベルリオーズの指揮、リスト自身のピアノによって行われました。この作品は、革新的な構成と循環主題の活用で知られています。バルトーク・ベーラは、この作品を「循環形式によるソナタ形式を初めて完全に実現させた作品」と高く評価しました。また、トライアングルが効果的に使用されている点も特徴的ですが、当時の楽器編成としては珍しく、批評家からは「トライアングル協奏曲」と揶揄されることもありました。

出版と献呈

この協奏曲は、1857年にハスリンガー社から出版されました。献呈は、イギリスのピアニストで作曲家のアンリ・リトルフに捧げられています。リトルフもまた、スケルツォを含む「交響的協奏曲」を作曲しており、この協奏曲の構成に影響を与えたと考えられています。

構成

全4楽章で構成され、全曲が切れ目なく演奏されます。演奏時間は約17分から18分です。

第1楽章：アレグロ・マエストーソ
変ホ長調、4分の4拍子。自由なソナタ形式で、オーケストラの力強い全合奏による第1主題で始まります。その後、ピアノによるカデンツァ風の楽句が続き、「グランディオーソ（堂々と）」と指示されています。
第2楽章：クワジ・アダージョ
ロ長調、8分の12拍子（または4分の4拍子）。緩徐楽章で、2部構成です。1部は弱音器をつけた弦楽器で静かに始まり、2部はピアノのトリルとアルベッジョによるカデンツァで始まります。
第3楽章：アレグレット・ヴィヴァーチェ - アレグロ・アニマート
変ホ長調、4分の3拍子。スケルツォに相当する楽章で、リトルフの「交響的協奏曲」からの影響が見られます。ここで初めてトライアングルが登場します。
第4楽章：アレグロ・マルツィアーレ・アニマート
変ホ長調、4分の4拍子。行進曲風の楽想で、既存の動機を取り入れながら、速度を上げていきます。終盤では第1楽章の冒頭主題が再現され、クライマックスを迎えて終結します。

楽器編成

独奏: ピアノ
木管楽器: フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、クラリネット2（B♭）、ファゴット2
金管楽器: ホルン2（F管）、トランペット2（F管）、トロンボーン3（テナー2、バス1）
打楽器: ティンパニ1対、トライアングル、シンバル
弦楽器: ヴァイオリン（2パート）、ヴィオラ（1パート）、チェロ（1パート）、コントラバス（1パート）

参考資料

『最新名曲解説全集9 協奏曲2』音楽之友社、1980年
木村重雄『OGT-39 リスト ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調』音楽之友社、2011年
福田弥『作曲家・人と作品:フランツ・リスト』音楽之友社、2005年

外部リンク

* ピアノ協奏曲第1番S.124/R.455の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)（PDFとして無料で入手可能）

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