ピッツ・スペシャル

ピッツ・スペシャル（Pitts Special）

ピッツ・スペシャルは、曲技飛行のために広く使われている複葉機です。この機体は、アメリカの飛行機設計者カーチス・ピッツによって設計され、1944年に初めて空を飛びました。それ以来、1960年代から現在にかけて、曲技飛行の競技会でその名を馳せてきました。

機体の概要

初代ピッツ・スペシャルの設計は1942年に始まり、1944年に初飛行を果たしました。この機体には55馬力のエンジンが搭載されており、空虚重量は226kgと非常に軽量ですが、パワー不足とされたため、すぐに90馬力へのエンジン換装が行われました。最初のモデルに対する注目が集まる中、顧客から10機の発注を受けましたが、初号機の完成を待たずに発注した会社が倒産。その後、1947年にはアクロバット飛行のパイロット、ベティ・スケルトンの手に渡りました。彼女は1948年から3年連続で全米アクロバット飛行教会の女性タイトルを獲得しました。

その後も何機かのピッツ・スペシャルが製造され、設計者のカーチス・ピッツは、アマチュアにも組み立て可能な機体の設計図面を販売。1962年にはドン・ピットマンがこの機体で全米アクロバット選手権を制し、1964年のリノ・エアレースでは観客を惹きつけ、一躍注目の的となりました。

現在の製造状況

カーチス・ピッツは1976年に製造および販売に関する権利を売却しましたが、現在もアメリカのワイオミング州に位置するAviat社が完成機を製造しています。また、フロリダ州のSteen Aero Labでは、ホームビルト機用の部品を供給しています。

Aviat社が製造する機体には、17フィートの翼巾を持つ単座型S-1や、20フィートの翼巾の複座型S-2が存在します。特に、曲技飛行の競技においては、ロシア製の単葉機Yak-50が登場するまで、ピッツ・スペシャルには対抗できる機体が現れませんでした。

ピッツ・スペシャルの派生型

ピッツ・スペシャルには、いくつかの派生型が存在します。主なものは以下の通りです：

• - S-1C/D/E: 組み立てキットとして提供されています。
• - S-1S: 完成機として販売されるS-1C。
• - S-1T: より出力の大きいエンジンを搭載した完成機で、現在も生産されています。
• - S-1-11B: 通称スーパースティンカー。300馬力のエンジンを搭載し、世界レベルの大会に競争力を持つもの。
• - S-2A: 複座型のモデル。
• - S-2B: エンジンを260馬力に強化し、2名乗りでも完全な曲技飛行が可能なモデル。
• - S-2C: 現在合う生産中のモデルで、3翅プロペラを採用。
• - S-2S: S-2Bの単座型。

参考スペック（S-2A）

• - 全長: 5.41 m
• - 全幅: 6.1 m
• - 全高: 1.94 m
• - 翼面積: 11.61 m²
• - 空虚重量: 454 kg
• - 最大離陸重量: 680 kg
• - エンジン: ライカミング・エンジンズ IO-360-A1A 水平4気筒ピストンエンジン（200hp）×1
• - 最大速度: 253 km/h
• - 実用上昇限度: 6,125 m以上
• - 航続距離: 最大燃料時で552 km
• - 乗員: 2名

ピッツ・スペシャルは、その性能や設計により、曲技飛行の世界で重要な存在となっています。また、競技者たちに多くの技術的可能性を提供して冠を勝ち取るための名機でもあります。

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