ピマーイ歴史公園

ピマーイ歴史公園は、タイのナコーンラーチャシーマー県ピマーイ郡に位置し、クメール遺跡を保存している重要な史跡です。アンコール遺跡へと続くクメール古道の終着点の一つであり、アンコール・ワットの副都的な役割を担っていたと考えられています。本記事では、ピマーイ歴史公園の概要、歴史、主要な遺跡について詳しく解説します。

概要

ピマーイ遺跡は、アンコール遺跡の北西約260kmに位置し、パノムルン遺跡やプレアヴィヒア遺跡と並び、タイ国内でも有数のクメール遺跡として知られています。この地は、かつてヴィマヤプラと呼ばれていましたが、現在ではピマーイとして知られています。

歴史

建立から衰退まで

ピマーイの多くの建築物は、11世紀から12世紀にかけてスーリヤヴァルマン1世によって建てられたと考えられています。その後、ジャヤーヴァルマン7世がピマーイ寺院を大乗仏教寺院に改宗しました。アンコール・ワットと同規模の遺跡であることから、当時ピマーイにはクメール人の大きな勢力があったと考えられます。しかし、ジャヤーヴァルマン7世の治世後、クメール王朝の影響力が衰退し、スコータイ王朝が勃興すると、ピマーイの重要性は低下し、衰退の一途をたどりました。

発見から保存へ

ピマーイ遺跡は、1901年にフランス人探検家エティエンヌ・エイモニエによって発見されました。その後、1936年にタイ政府が遺跡の保存を決定し、1964年から1969年にかけてフランスの専門家チームも参加して修復作業が行われました。1989年には、シリントーン王女を迎えて開会式が行われ、一般公開されるようになりました。

遺跡

ピマーイ遺跡の最大の特徴は、通常東向きに建てられることが多い周辺の遺跡とは異なり、南向きに建てられている点です。これは、クメール王朝の都であったヤショダラプラ（アンコールの都）に正面を向けて作られたためと考えられています。

プラッププラー

公園の南入口から入ると、左手の外周壁の外側に長方形の建物「プラッププラー」があります。通称「金庫」とも呼ばれ、王や貴族が祭礼を行う際の控えの間として使用されていました。1968年の発掘調査では、神仏像や装飾品、硬貨など多くの遺物が発見されたことから、「金庫」と呼ばれるようになりました。

ナーガの橋

南の入口から塔門に向かう途中、砂岩で作られた十字型の橋「ナーガの橋」があります。幅4m、長さ31.7mで、盛り土の上に作られ、橋の欄干は七頭のナーガで飾られています。この橋は、聖域への入口であり、人間界と天界を結ぶ橋とも考えられています。

塔門と外周壁

塔門は、外周壁（ガムペーンゲーウ）の各辺の中央に位置しています。北側と南側の門は中央にありますが、西側と東側の門はやや北寄りに配置されています。塔門の平面は十字型をしており、周壁内部は神々が住まう天界と考えられています。

参道

参道は砂岩でできており、南側の塔門から中央祠堂を取り囲む内周壁（ラビアンコット）の間に位置しています。参道は地面から約1m盛り土をして作られ、三つの道が交差し、田の字を形成しています。修復中に屋根飾りや陶製の瓦片が多数出土したことから、以前は木製の柱で支えられた瓦屋根があったと考えられています。

塔門と内周壁

内周壁は砂岩が高く積まれ、中央祠堂を取り囲んでいます。壁はラビアンコットと呼ばれ、外周壁と類似しています。南側の扉門枠には、1108年から1112年までの古クメール語碑文が残っており、神仏像の製造、都市建設、当時の貴族の名、そしてクメール王朝の王ダーラニンドラヴァルマン1世の名が刻まれています。

中央祠堂

中央祠堂は、ピマーイ遺跡において最も大きく重要な建築物であり、11世紀から12世紀頃に建立されたと考えられています。白色砂岩が使用され、南面が正面になるように作られています。祠堂は礼拝室と仏舎利室の2室で構成されており、壁面にはラーマヤナや仏教説話をモチーフにした装飾文様が彫られています。仏舎利室はカンカルハと呼ばれ、最も重要な礼拝所です。

プラーン・ヒンデーン

プラーンとはクメール式の塔のことで、「赤石塔」を意味します。中央祠堂の南西に13世紀頃に建立されました。四方にバルコニーを持ち、北向きの入口と扉枠には、古代叙事詩マハーバーラタの「英雄カルナの猪狩り」が描かれています。

バラモン祠

バラモン祠は、砂岩とラテライトで構成されており、プラーン・ヒンデーンと同じ基壇の上に建てられています。1950年には、シヴァリンガ7基が出土しており、バラモン教の儀礼が行われた可能性が考えられます。また、建物の形状と位置から経蔵として使用された可能性もあります。

プラーン・プロマタット

プラーン・プロマタットは、中央祠堂の南東に位置するラテライト石製の塔です。塔の中から、ジャヤーヴァルマン7世の似姿と考えられる座像と、妃ジャヤーラージャデーヴィー王妃と考えられる膝をついた女性像が発見されました。これらの彫像は、現在ピマーイ国立博物館に展示されています。

経蔵

中央祠堂の西側外、内周壁と外周壁の間には、同じ大きさの2棟の砂岩製の建築物があり、経蔵と呼ばれています。建物の中は長細い部屋になっており、経典を保管するために使用されたと考えられています。

ピマーイ国立博物館

ピマーイ遺跡の出土品は、ピマーイ国立博物館に展示されています。博物館では、クメール遺跡のレリーフや彫刻など、数多くの出土品を見ることができます。

ピマーイ歴史公園は、クメール王朝の歴史と文化を今に伝える貴重な遺跡です。ぜひ一度訪れて、その壮大さと美しさを体感してください。

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