ピースキーパー (ミサイル)

LGM-118A ピースキーパー：冷戦時代の核抑止力

LGM-118A ピースキーパーは、アメリカ空軍が運用していた強力な大陸間弾道ミサイルです。その圧倒的な破壊力と高度な技術は、冷戦時代の核抑止戦略において重要な役割を果たしました。本稿では、ピースキーパーの開発から退役、そしてその後の転用までを詳しく解説します。

開発と配備

ピースキーパーは、既存のミニットマンミサイルの後継として開発されました。1972年に開発が開始され、当初はMXという実験的なミサイルとして知られていました。配備方式には、移動式や空中発射式などが検討されましたが、最終的には従来型のサイロ発射式が採用されました。1982年に「ピースキーパー（平和維持者）」と命名され、1983年には発射実験に成功。1986年から配備が開始され、1988年には全50基の配備が完了しました。全ミサイルはワイオミング州のフランシスE.ワーレン空軍基地に配備されました。

冷戦終結後も、移動式配備として鉄道移動方式の検討が進められましたが、1991年に冷戦終結に伴い計画は中止されました。

ミサイルの性能

ピースキーパーは、MIRV（多弾頭）方式を採用しており、300キロトンの核弾頭を10個搭載していました。ミサイルの能力としては11個の弾頭を搭載可能でしたが、戦略兵器制限交渉により10個に制限されました。

ミサイルは、固体ロケット3段と液体燃料ロケット1段の計4段構成で、固体ロケットによって宇宙空間まで打ち上げられ、液体ロケットによるバスによって各弾頭を目標位置まで運ぶ仕組みでした。サイロからの発射にはコールドローンチ方式が採用され、圧縮空気によってミサイルをサイロから排出後、上空でロケットエンジンに点火する方式でした。この方式により、ミサイル発射後のサイロの再利用が可能となりました。

退役と転用

STARTⅡ（第二次戦略兵器削減条約）は、MIRV方式のICBMを全廃することを目指していたため、ピースキーパーは削減対象とされました。STARTⅡは完全には履行されませんでしたが、モスクワ条約に基づき、過大な核戦力とみなされ、2005年までに退役しました。

退役したピースキーパーは、オービタル・サイエンシズ社が取得し、ミノタウロスIVという使い捨て型ロケットとして人工衛星打ち上げに転用されています。さらに、再突入体/弾頭部は、ミニットマンICBMの近代化部品として再利用されました。

主要諸元

全長：21.6 m
直径：2.34 m
発射重量：88,450 kg
射程：9,600 km
CEP（半数必中界）：100 m以下

登場作品

ピースキーパーは、いくつかのフィクション作品にも登場しています。例えば、『FUTURE WAR 198X年』では、「MX戦略核ミサイル」という名称で登場し、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』では、物語の重要な要素として描かれています。

まとめ

LGM-118Aピースキーパーは、冷戦時代の象徴的な兵器であり、その技術は現代の宇宙開発にも貢献しています。その存在は、核兵器の抑止力と、国際情勢の変化、そして技術の進歩を物語る重要な歴史的遺産と言えるでしょう。

関連項目

MGM-134 ミゼットマン：ピースキーパーと同様の誘導航法装置や再突入体を使用していましたが、小型で単弾頭ミサイルでした。
* アメリカ合衆国のミサイル一覧

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