ピーター&ゴードン

ピーター&ゴードンは、1960年代に活躍したイギリスの音楽デュオです。ピーター・アッシャーとゴードン・ウォーラーは、ロンドンのウェストミンスター・スクールで出会い、音楽活動を始めました。

1964年、彼らは「愛なき世界」（A World Without Love）でアメリカの音楽シーンに衝撃を与え、全米チャートの首位を獲得しました。この曲の大ヒットにより、ピーター&ゴードンはブリティッシュ・インベイジョンを代表するグループの一つとして、世界的な名声を確立しました。

彼らの音楽は、エヴァリー・ブラザーズを彷彿とさせる美しいハーモニーが特徴で、イギリス本国だけでなく、アメリカでも幅広い層からの支持を集めました。初期の成功には、ポール・マッカートニーが提供した楽曲群が大きく貢献しています。ピーターの妹、ジェーン・アッシャーが当時ポール・マッカートニーと交際していた関係から、「愛なき世界」を含む「Lennon&McCartney」名義の楽曲をレコーディングする機会に恵まれたのです。

ピーター&ゴードンの代表的なヒット曲には、「逢いたくないさ」（I Don't Want To See You Again）、「二人だけのパラダイス」（Nobody I Know）などがあります。また、バディ・ホリーの「二人の恋は」（True Love Ways）やデル・シャノンの「アイ・ゴー・トゥ・ピーセス」（I Go to Pieces）のカバーも彼らのレパートリーとして知られています。

興味深いエピソードとして、彼らのヒット曲「Woman」は当初「Bernard Webb」という変名で発表されました。これは、ポール・マッカートニーが自身の名声に頼らずに曲の評価を試すために意図的に名前を伏せたものでした。後にこの曲はマッカートニーの作品として正式にクレジットされています。

1965年には日本を訪れ、コンサートを開催し、日本のファンを魅了しました。しかし、1966年の「Lady Godiva」を最後に、彼らのヒットは徐々に減少していき、1968年に解散しました。

解散後、ピーター・アッシャーは音楽業界で活動を続け、アップル・レコードのA&Rとしてアーティストの発掘・育成に携わりました。その後、ジェームス・テイラーのマネージャー兼プロデューサーとしてアメリカに渡り、リンダ・ロンシュタットやシェールなど、数多くの有名アーティストを手がけ、成功を収めました。

一方、ゴードン・ウォーラーはソロ活動を行いましたが、残念ながら以前のような成功を収めることはできませんでした。しかし、彼がヴァーティゴ・レーベルに残したソロアルバムは、現在では非常に貴重なアイテムとして高値で取引されています。

2005年、ピーターとゴードンはチャリティーイベントのために37年ぶりに再結成し、往年のファンを喜ばせました。2006年には、ビートルズのファンイベントでポール・マッカートニーから祝福を受けました。再結成後は、アメリカやアジアでツアーを行うなど、精力的な活動を展開しました。

しかし、2009年7月、ゴードン・ウォーラーが心臓発作により64歳で急逝し、再結成したピーター&ゴードンの活動は再び幕を閉じました。

2018年6月には、ピーター・アッシャーがギタリストのアルバート・リーとのデュオで来日公演を行い、1965年の日本公演でベースを担当したザ・スパイダースの加藤充が飛び入り参加し、「愛なき世界」を演奏するサプライズもありました。

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