黒シャツ隊

黒シャツ隊：イタリア・ファシズムの象徴

黒シャツ隊（Camicie Nere）は、ベニート・ムッソリーニ率いるイタリア国家ファシスト党の民兵組織として、イタリアの歴史に深く刻まれた存在です。第一次世界大戦後の1919年、ムッソリーニが設立したイタリア戦闘者ファッシがその起源であり、当初は退役軍人などを中心とした義勇兵的な色彩を持っていました。

初期の黒シャツ隊：暴力と台頭

黒シャツ隊の隊員は、退役軍人の他に農民や、ファシズムに共感した政治家、反共主義者などが加わっていました。戦闘ファッシは勢力を拡大し、黒シャツ隊はその私兵部隊として暴力的な行動を繰り返しました。1921年の総選挙でムッソリーニが議席を獲得すると、戦闘ファッシはファシスト党に改組され、黒シャツ隊も急速に拡大し、1922年のローマ進軍時には20万人の隊員を擁するまでに成長しました。

国家機関への転換：国防義勇軍

政権掌握後、[ファシスト党]]は黒シャツ隊の扱いを検討する必要に迫られました。ナチス・ドイツの突撃隊]とは異なり、黒[[シャツ隊は正式な国家機関として統合されることになります。1923年、イタリア国王は黒シャツ隊を「王の軍隊」として承認し、翌年には国防義勇軍（Milizia Volontaria per la Sicurezza Nazionale、MVSN）と改称され、国防省の管理下に置かれました。「第5の軍」と称され、陸海空軍、カラビニエリに次ぐ地位を確立したのです。

国防義勇軍は、正規軍の兵役年齢に該当しない青少年や中高年層を訓練する役割も担いました。第二次エチオピア戦争（1935年～1936年）にも参加し、アディスアベバ入城を果たしました。しかし、陸軍との統合後も、兵員の質や指揮系統、装備の面で問題を抱え続け、スペイン内戦などでの戦闘において、その弱点が露呈しました。

終焉と再編：国家警備軍

1943年、ムッソリーニ失脚とイタリアの降伏により、国家組織としての黒シャツ隊は終焉を迎えます。しかし、ムッソリーニがイタリア社会共和国（RSI）を樹立すると、国防義勇軍は国家警備軍（Guardia Nazionale Repubblicana、GNR）として再編されました。新たな部隊も編成され、一部はパルチザンとの戦闘に従事しました。

組織構造と階級制度

黒シャツ隊の組織構造は、古代ローマの軍制になぞらえた独特の階級制度を持っていました。ムッソリーニは総司令官（Comandante Generale）として君臨し、ゾーナ（師団）、レギオ（連隊）、コホルス（大隊）などの単位で編成されていました。階級体系は、総司令官から、伍長に相当する階級まで細かく規定されていました。

国際的な影響

黒シャツ隊は、その制服である黒いシャツ、そして党の私兵部隊としての存在感から、多くのファシズム勢力に模倣されました。ナチス・ドイツの褐色シャツ隊もその影響を受けています。世界各地で、様々な色のシャツを着用した民兵組織が結成され、その多くは黒シャツ隊の制度や様式を参考にしていると言えるでしょう。

黒シャツ隊は、イタリア・ファシズムを象徴する組織として、その歴史的役割、組織構造、そして国際的な影響という多角的な視点から理解する必要があります。その暴力的な行動や、ファシズムの拡大に与えた影響は、歴史の暗い側面として捉え続けられるでしょう。

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