フィアット・1800/2100/2300

フィアット1800/2100/2300：イタリアンエレガンスと高性能エンジンの融合

フィアット1800/2100/2300は、イタリアの自動車メーカー、フィアットが1959年から1969年まで製造した中型乗用車です。1950年代から生産されていたフィアット1400/1900の後継モデルとして登場し、その洗練されたデザインと革新的な技術で、自動車史に名を刻みました。

ピニンファリーナによる美しいボディデザイン

著名なカロッツェリア、ピニンファリーナが手がけたボディデザインは、同時代のプジョー404やオースチンA55にも通じる、時代のトレンドを捉えた美しいフォルムです。4ドアセダンの洗練されたデザインは、多くの自動車メーカーに影響を与えました。

高性能6気筒OHVエンジンの搭載

フィアット1800/2100/2300の最大の特徴は、当時としては非常に高度な技術を採用したエンジンです。元フェラーリの主任技術者であったアウレリオ・ランプレディが設計した、ダブルロッカーアームによるクロスフロー弁機構と多球型燃焼室を組み合わせた6気筒OHVエンジンは、1800ccから2300ccの排気量バリエーションで、スムーズで力強い走りを提供しました。この複雑で高性能なエンジンは、同クラスの量産車としては異例のものでした。

各モデルの特徴

1800 (1959-1968年): 1796cc、75馬力(後に81馬力にパワーアップ)のエンジンを搭載。4ドアセダンと5ドアワゴンが用意され、最高速度は137～146km/hに達しました。改良版の1800Bでは、リアサスペンションが改良され、走行性能が向上しました。

2100 (1959-1961年): 1800と同じ車体に、2054cc、82馬力エンジンを搭載した高性能モデルです。ホイールベースを延長し、4灯式ヘッドライトと専用フロントグリルを持つ「2100スペチアーレ」も存在しました。

2300 (1961-1969年): 2100をベースに、エンジン排気量を2279cc、出力を105馬力に拡大したモデルです。4灯式ヘッドライトと4輪ディスクブレーキを採用し、1966年にはフィアット車初となる自動変速機がオプションで設定されました。カーグラフィック誌の試乗記では、そのスムーズなエンジン回転と静粛性、充実の装備が絶賛されました。

2100S/2300Sクーペ (1961-1968年): カロッツェリア・ギアのデザインによる2+2シーターのクーペモデルです。OSI社が製造し、パワーウィンドウなどの豪華装備が特徴で、「プアマンズ・フェラーリ」と呼ばれました。エンジンはツインキャブレターでチューンされ、2300Sでは136馬力にまで強化されました。

1500L (1963-1968年): 1800/2100の車体に、1481ccの4気筒エンジンを搭載した廉価版モデルです。簡素化された内外装で、タクシー需要などをターゲットとしていました。スペインのセアトでも生産されました。

日本におけるフィアット1800/2100/2300

発表当時、フィアット1800/2100は、日本の中型車メーカーにとってベンチマークとなる存在でした。そのデザイン、軽量ボディ、そして6気筒エンジンは、日本の自動車技術者達に大きな刺激を与えました。星野芳郎氏や小林彰太郎氏ら自動車評論家も、その高い完成度を高く評価しています。新三菱重工はノックダウン生産を計画するほどでした。

日本自動車・西欧自動車を通じて輸入されたフィアット1800/2100/2300は、高価格ながらも、当時の日本車に比べて優れた性能と装備を持つ輸入車として人気を博し、ドラマ『太陽にほえろ!』にも登場しています。

まとめ

フィアット1800/2100/2300は、美しいデザイン、高性能エンジン、そして日本自動車業界に与えた影響を通して、自動車史において重要なモデルです。その存在は、1960年代の自動車文化を語る上で欠かせないものとなっています。

もう一度検索