フィリダ・ロイド

フィリダ・ロイド：革新的な演出で世界を魅了する演出家・映画監督

フィリダ・ロイド（Phyllida Lloyd）は、1957年生まれのイギリス出身の演出家・映画監督です。彼女は、演劇、オペラ、映画と幅広い分野で活躍し、常に革新的な演出で観客を魅了してきました。

若き日の挑戦と飛躍

イングランド西部の港湾都市ブリストルで育ったロイドは、バーミンガム大学卒業後、英国放送協会 (BBC) に勤務。その後、演出家としての道を歩み始めます。ニューウルジー・シアターでの見習い時代を経て、チェルトナムのエブリマンシアター、そしてロンドンのオールド・ヴィック・シアターで演出家として経験を積みました。オールド・ヴィック・シアターでの『間違いの喜劇』の成功は、彼女の才能を広く知らしめるきっかけとなりました。

マンチェスターのロイヤル・エクスチェンジ・シアターでは、『冬物語』、『悪口学校』、『メディア』など数々の名作を手がけ、ウォーレ・ショインカの『死と王の先導者』の演出では、大きな喝采を浴びました。1991年には、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーでトーマス・シャドウェルの『ヴァーチュオーゾ』を演出し、アレクサンドル・オストロフスキーの『芸術家と賞賛』でも成功を収めました。

演劇界での成功とオペラへの挑戦

1992年、ロイヤル・コート・シアターでのジョン・グェア『六次の隔たり』で初の商業的な成功を収め、ウエストエンドに進出。1994年にはロイヤル・ナショナル・シアターで『ペリクリーズ』を手がけました。また、テリー・ジョンスンの『ヒステリア』や、ベルトルト・ブレヒトとクルト・ヴァイルの『三文オペラ』は、世界的に高い評価を得ました。

その後、ロイドはオペラの世界にも足を踏み入れます。オペラノースでのデビュー作、エマニュエル・シャブリエの『エトワール』を皮切りに、『ラ・ボエーム』、『グローリアーナ』、『メデア』など、数々のオペラ作品を演出。イングリッシュ・ナショナル・オペラやウェールズ・ナショナル・オペラでも活躍し、『カルメル派修道女の対話』、ジュゼッペ・ヴェルディの『マクベス』、ポウル・ルーザスの『侍女の物語』など、話題作を次々と発表しました。その功績が認められ、エミー賞、FIPA d'Or、ロイヤル・フィルハーモニック協会賞など、数々の国際的な賞を受賞しています。

ミュージカル、映画、そしてオール・フィメール・シェイクスピア

1999年、ロイドはABBAのミュージカル『マンマ・ミーア!』の演出を手がけ、世界的な大ヒットを記録。2008年には、自身初の長編映画監督作品として『マンマ・ミーア!』を映画化し、こちらも大成功を収めました。また、マーガレット・サッチャーの伝記映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』では、メリル・ストリープを主演に迎え、高い評価を得ました。

近年では、オール・フィメール・キャストでシェイクスピア劇を上演するという新たな試みにも挑戦しています。2012年の『ジュリアス・シーザー』を皮切りに、『ヘンリー四世』、『じゃじゃ馬ならし』など、女性のみのキャストによる革新的なシェイクスピア劇を次々と発表し、演劇界に新たな風を吹き込んでいます。

多彩な才能と社会への貢献

ロイドは、演出家、映画監督としての才能に加え、教育者としても活躍しています。オックスフォード大学の客員教授やブリストル大学、バーミンガム大学の名誉学位を授与されるなど、その知性と才能は高く評価されています。また、オープンリー・レズビアンであることを公表し、LGBTQ+コミュニティのロールモデルとしても影響を与えています。2010年には、大英帝国勲章 (CBE) を授与されました。

フィリダ・ロイドは、常に新しい表現を追求し、観客に感動と驚きを与え続けています。彼女の今後の活躍から、ますます目が離せません。

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