フィリップ・カートレット

フィリップ・カートレット卿：18世紀の偉大な探検家

フィリップ・カートレット卿（1733年-1796年）は、18世紀イギリス海軍を代表する探検家の一人です。チャンネル諸島ジャージー島出身の貴族の子として生まれ、1747年にイギリス海軍に入隊。その後、数々の航海に従事し、世界周航航海を指揮したことで知られています。

海軍でのキャリアと世界周航

カートレット卿は若くして海軍に入り、ジョン・バイロン船長のもとで航海術を磨きました。バイロン率いるドルフィン号での世界周航航海（1764-1766年）に参加した後、スワロー号の司令官として、サミュエル・ウォリス率いるドルフィン号と共に、再び太平洋探検航海に出ます。

この二度目の航海で、カートレット卿は歴史に名を刻む偉業を成し遂げます。1766年4月22日に出航し、マゼラン海峡を通過、太平洋に進出。航海の過程で、1767年2月にピトケアン諸島を発見しました。この島々は、彼の航海に参加した士官候補生、ロバート・ピトケアンの名を冠して命名されました。

その後も、トゥアモトゥ諸島、サンタクルーズ諸島（ソロモン諸島）、パプアニューギニアのアタフ島などを発見、モルッカ諸島やスラウェシ島の西岸を調査しました。1767年12月にはマカッサルに停泊し、1768年6月に航海を再開。バタヴィア（現ジャカルタ）、喜望峰を経由し、1769年にイギリスに帰国しました。この航海の功績は計り知れません。

帰国後と晩年

帰国後、カートレット卿はジャージー島に戻り、「トリニティ卿」の称号を得て、行政官として活躍しました。1772年には結婚し、一男一女をもうけています。海軍での新たな任務に就くことはしばらくありませんでしたが、1773年には自身の航海を記した報告書『An Account of the Voyages undertaken by Order of His Present Majesty...』を出版しました。

その後も海軍でのキャリアを続け、1779年にはエンディミニオン号の司令官となり、西インド諸島に航海しました。1794年に少将補の階級で海軍を退役。その生涯は、18世紀の海洋探検史に燦然と輝くものとなりました。

カートレット卿の航海の意義

カートレット卿の航海は、太平洋における地理的発見に大きく貢献しました。ピトケアン諸島を始めとする多くの島々の発見は、後の探検や植民地化に影響を与えました。また、彼の航海日誌は貴重な記録として、今日まで歴史家の研究対象となっています。彼の航海は、単なる探検にとどまらず、地理学、人類学、海洋学など、多岐にわたる分野に貢献したと言えるでしょう。

参考文献

Philip Carteret, Helen Wallis (Hrsg.): Carteret’s voyage round the world, 1766-1769. (= Hakluyt Society Series 2. 124–125). 2 Bände. Cambridge University Press, Cambridge 1965.
P. Werner Lange: Südseehorizonte. Eine maritime Entdeckungsgeschichte Ozeaniens. 3. Auflage. Urania-Verlag, Leipzig/Jena/Berlin 1990
John Hawkesworth: An Account of the Voyages undertaken by the Order of His Present Majesty for Making Discoveries in the Southern Hemisphere, and successively performed by Commodore Byron, Captain Carteret, Captain Wallis, and Captain Cook. Vol. I. The Carteret, Byron, Carteret and Wallis Voyages. London 1773.
John Hawkesworth: Geschichte der See-Reisen und Entdeckungen im Sud-Meer welche auf Befehl Sr Grossbrittannischen Majestat unternommen : und von Commodore Byron, Capitain Wallis, Capitain Carteret und Capitain Cook in Dolphin, der Swallow, und dem Endeavour nach einander ausgefuhret worden sind / aus den Tagebuchern der verschiedenen Befehlshaber und den Handschriften Joseph Banks in drey Banden verfasst Dr. Johann Hawkesworth ; Mit des Herrn Verfassers Genehmhaltung aus dem Englischen ubersetzt von Johann Friedrich Schiller. Haude & Spener, Berlin 1774.
Te Rangi Hiroa: An introduction to Polynesian Anthropology. (= Bernice P. Bishop Museum Bulletin. 187). The Museum, Honolulu 1945
Te Rangi Hiroa: Explorers of the Pacific. European and American discoveries in Polynesia. (= Bernice P. Bishop Museum Special Publication. 43). The Museum, Honolulu 1953.
* 原田範行訳『南太平洋発見航海記 南方大陸を求めて』(岩波書店「シリーズ世界周航記1」) 2007年

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