フィル・ラッド

フィル・ラッド：AC/DC|AC_DCを支える豪州出身のドラマー

フィリップ・ヒュー・ノーマン・ラッド（Phillip Hugh Norman Rudd, 1954年5月19日 - ）は、フィル・ラッドの名で広く知られるオーストラリアのドラマーです。彼は、世界的なロックバンドAC/DC|AC_DCのリズムを支える重要な存在として、そのキャリアを輝かせてきました。1975年から1983年までAC/DC|AC_DCのドラマーを務め、その後一時脱退しましたが、1994年に復帰。2015年に活動を停止したものの、2018年には再びバンドに合流し、現在もAC/DC|AC_DCの一員として活躍しています。1977年にベーシストのマーク・エヴァンスが脱退して以降、AC/DC|AC_DCで唯一のオーストラリア生まれのメンバーです。また、2003年には他のメンバーと共にロックの殿堂入りを果たしています。

初期の音楽活動とAC/DC|AC_DCへの加入

メルボルンの様々なバンドで演奏経験を積んだ後、ラッドはバスター・ブラウンというバンドに加入。そこでは、後にローズ・タトゥーのヴォーカルとなるアングリー・アンダーソンと共演しました。しかし、1974年にはロビー・ロイドと共にカラード・ベルズに参加するため、バスター・ブラウンを脱退します。1975年、ラッドはカラード・ベルズで一緒だったトレヴァー・ヤングから、AC/DC|AC_DCのリズム・セクションのオーディションに関する情報を得ます。彼は、バスター・ブラウンで共に活動したベーシストのジョーディー・リーチを誘いオーディションへの同行を提案しますが、リーチはこれを辞退。ラッドは単身でオーディションに臨み、その場で採用が決定しました。彼の安定したドラミングスタイルは、1975年から1983年にかけてリリースされた一連のアルバムで、AC/DC|AC_DCサウンドの確立に大きく貢献しました。1976年、AC/DC|AC_DCは拠点をイギリスに移し、国際的なツアーやレコーディングを精力的に行うようになります。

一時脱退とニュージーランドでの生活

1980年、ヴォーカルのボン・スコットが急逝するという悲劇に見舞われます。しかし、バンドはブライアン・ジョンソンを新たなヴォーカルに迎え、AC/DC|AC_DC史上最大の成功作となるアルバム『バック・イン・ブラック』をリリースします。スコットの死はラッドにとって大きな衝撃となり、その後もAC/DC|AC_DCに在籍したものの、アルバム『征服者』のレコーディング中にバンドを離れることになります。この時、ラッドは既に自身のパートの録音を終えており、急遽セッション・ドラマーのB・J・ウィルソンが追加の録音のために呼ばれましたが、結局ウィルソンの演奏は採用されませんでした。ラッドの後任には、後にディオでドラマーを務めるサイモン・ライトが加入し、アルバムからリリースされたシングルのミュージックビデオにも出演しました。

ラッドがバンドから解雇された背景には、彼の薬物問題や、バンドの創設者でありリズムギターを担当するマルコム・ヤングとの対立がありました。AC/DC|AC_DCを解雇されたラッドは、ニュージーランドのタウランガでヘリコプター会社を買収し、一時的に音楽活動から引退します。ニュージーランドへの移住を決めたのは、有名になりすぎたためでもありました。かつてラッドが住んでいた地域にはAC/DC|AC_DCのファンが頻繁に訪れ、住民に彼の居場所を尋ねるなど、迷惑行為が頻発していたのです。

AC/DC|AC_DCを離れていた期間について、ラッドは「カーレースをしたり、ヘリコプターを操縦したり、農家として作物を育てたりしていた。ニュージーランドでの生活は素晴らしかった。静かで誰にも邪魔されなかった」と語っています。その一方で、ドラムの演奏も続けており、自分専用のスタジオも建設していました。

AC/DC|AC_DCへの復帰、そして再びの活動停止

1991年、AC/DC|AC_DCがレイザーズ・エッジ・ワールド・ツアーでニュージーランドを訪れた際、バンドはラッドにジャムセッションを持ちかけます。ラッドはこの誘いを受け入れ、最終的にAC/DC|AC_DCへの復帰が決まりました。ラッドのドラミングスタイルは、彼が不在の間にドラムを担当したサイモン・ライトやクリス・スレイドと比較して、バンドのメンバーのスタイルに最も適していると評価されています。そのため、クリス・スレイドの後任としてラッドが復帰した際、メンバーは皆これを歓迎しました。スレイドは円満にバンドを去り、バンドは彼の演奏と技術を高く評価しつつも、1983年の騒動以降、AC/DC|AC_DCの音楽には何かが欠けていたと述べています。その後、ラッドは『ボールブレイカー』、『スティッフ・アッパー・リップ』、『悪魔の氷』、『ロック・オア・バスト』と、AC/DC|AC_DCの4枚のアルバムに参加。『悪魔の氷』は、1981年の『悪魔の招待状』以来の大ヒットとなりました。

しかし、2014年11月6日、ラッドは覚醒剤と大麻の所持容疑で逮捕され、さらにマネジメント担当スタッフへの脅迫容疑も浮上します。この事態を受け、アンガス・ヤングは、逮捕前のレコーディング時から問題を抱えていたことを明かし、ラッドの現状を嘆き、バンドからの離脱を示唆しました。その後、ワールドツアーにはクリス・スレイドが代役として参加しましたが、同年4月末にはバンドの公式ページからラッドの名前が削除されました。ツアー不参加発表から数か月後の同年7月9日、ラッドに8ヶ月の自宅拘禁判決が下されましたが、彼はこの取り決めを守らず、自宅に娼婦を呼び飲酒したとして7月18日に再び逮捕されます。

再びAC/DC|AC_DCへ、そして現在

2018年夏、「ロック・オア・バスト ワールドツアー」終了後、活動を休止していたAC/DC|AC_DCが、ニューアルバム『パワーアップ』をレコーディングするにあたり、聴覚問題を抱えていたブライアン・ジョンソン、引退を表明していたクリフ・ウィリアムズと共に、ラッドもバンドに復帰しました。AC/DC|AC_DCのサウンドを支え続けるフィル・ラッドの今後の活躍に、世界中のファンが注目しています。

使用機材

ラッドは、ソナー(Sonor)のドラム、パイステのシンバル、エバンスのドラムヘッド、イーストンアヘッドのドラムスティックを使用しています。詳細については英語版(Phil Rudd)を参照ください。

参考文献

『AC/DC|AC_DC評伝 モンスターバンドを築いた兄弟（おとこ）たち』、DU BOOKS、2018年6月、ISBN 978-4-86647-020-7。
Walker, Clinton (1994), Highway to Hell: The Life and Times of AC/DC|AC_DC Legend Bon Scott, Verse Chorus Press, ISBN 0-283-06263-0
Stenning, Paul; Johnstone, Rob (2005). AC/DC|AC_DC: Two Sides to Every Glory: The Complete Biography. Chrome Dreams. ISBN 1842403087

外部リンク

ACDC.com official site
* ACDCRocks.com

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