フェイ・レイ

フェイ・レイ：ハリウッド黄金期を彩った「絶叫クイーン」の生涯

フェイ・レイ（1907年9月15日-2004年8月8日）は、カナダ出身のアメリカ合衆国を代表する女優である。1933年公開の映画『キング・コング』でヒロイン、アン・ダロウを演じたことで世界的な名声を博し、現在でも多くの映画ファンに記憶されている。彼女のキャリアはサイレント映画時代から始まり、ハリウッド黄金期を生き抜き、数々の作品に出演。その演技力は高く評価され、「絶叫クイーン」という異名で知られる一方、彼女自身はその呼び方には複雑な感情を抱いていたという。

生い立ちとキャリアの始まり

カナダ、アルバータ州の牧場で生まれたフェイ・レイ。末日聖徒イエス・キリスト教会を信仰する両親のもと、6人兄弟姉妹の1人として育った。幼少期はカナダとアメリカ合衆国を転々と移り住み、ロサンゼルスのハリウッド高校へ進学。16歳で地元新聞社がスポンサーの短編歴史映画に出演したことが、彼女の女優としてのキャリアの始まりとなった。

その後、数々の映画に出演し、演技経験を積んでいく。1926年にはワンパス・ベビー・スターズに選ばれ、注目を集める。ユニバーサル・スタジオとの契約を経て、1927年にはパラマウント・ピクチャーズと契約を結び、エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督の大作『結婚行進曲』でヒロインを演じるなど、着実にキャリアを築き上げていった。パラマウントではサイレント映画からトーキー映画への過渡期を経験し、数多くの作品に出演。この頃、西部劇映画にも多数出演したことで幅広い役柄をこなせる女優としての実力を高めていった。

『キング・コング』と絶頂期

パラマウント・ピクチャーズを離れた後、フェイ・レイはホラー映画を中心に活動。数々の作品に出演した経験は、後に彼女を『キング・コング』へと導くことになる。当初、アン・ダロウ役にはジーン・ハーロウが予定されていたが、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーとの専属契約により実現不可能となった。このため、監督のメリアン・C・クーパーは、1万ドルの出演料でフェイ・レイを抜擢した。

『キング・コング』での演技は彼女の代表作となり、世界的な成功を収める。しかし、同時に「絶叫クイーン」というレッテルを貼られることとなる。『キング・コング』以降も多くの作品に出演を続けたが、オーディションのたびに「叫び声」を求められることに嫌気がさし、その呼び名を苦々しく思っていたと語っている。

『キング・コング』成功後も、『世界一の金持ち娘』などに出演するも、1940年代に入ると出演機会が減少し始める。1942年に再婚を機に一時引退するものの、経済的な事情からすぐに復帰。その後も映画やテレビドラマに出演し続け、1980年に女優業から引退した。

晩年とその後

引退後も、フェイ・レイは映画界との関わりを継続。1991年にはボザール舞踏会のクイーンに選ばれ、1998年には自伝『On the Other Hand』を出版。また、ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』への出演オファーを辞退したり、アカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めたりと、精力的に活動を続けた。晩年は『キング・コング』の舞台となったエンパイア・ステート・ビルディングを頻繁に訪れており、1991年には竣工60周年記念式典に主賓として招待されたほど深い関わりを持っていた。

2004年、ピーター・ジャクソン監督のリメイク版『キング・コング』へのカメオ出演を打診される。当初は出演を躊躇していたものの、ジャクソン監督との交流の中で出演に前向きになっていた矢先、ニューヨークの自宅で死去。享年96歳だった。彼女の死後、エンパイア・ステート・ビルディングは弔意を表し、15分間の消灯が行われた。

フェイ・レイは、サイレント映画からトーキー映画へ、そしてテレビ時代へと移り変わるハリウッドを代表する女優として、輝かしいキャリアを築き上げた。彼女の演技、そして人生は、これからも多くの人々に感動と記憶を与え続けるだろう。

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