フェリペ2世 (スペイン王)

フェリペ2世 - スペインの絶対主義者

フェリペ2世（Felipe II, 1527年5月21日〜1598年9月13日）は、ハプスブルク家の一員としてスペイン国王を務め、カトリックの教徒であることを生涯貫いた代表的な君主です。彼の治世は1556年から1598年にかけてであり、スペイン帝国・スペイン黄金世紀において最も重要な時期でした。彼は「慎重王」と称され、国家の統治に対して非常に慎重かつ計画的な姿勢を持っていました。

生涯の幕開け

フェリペは、神聖ローマ皇帝カール5世（スペイン国王カルロス1世）とポルトガル王マヌエル1世の娘イザベルの間に生まれました。彼の名は、1542年にスペインの探検家がフィリピン諸島にちなんで名付けたことでも知られています。1556年、28歳で父の退位によりスペイン国王に即位し、同時にオーストリアを除く広範な領土を継承しました。この歴史的な瞬間により、ハプスブルク家はスペイン・オーストリアの二つの支流に分かれることとなります。

経済的な試練と政治手腕

即位後、フェリペは膨大な借金を背負い、そのため1557年には最初の破産宣告を行わざるを得ませんでした。彼は在位中に合計4回のバンカロータを経験しましたが、それでもイタリア戦争においてはカトー・カンブレジ条約を結ぶことで、フランスの要求を拒否しました。

フェリペはアラゴン王国にあった副王制を用いて帝国全体を統治し、1561年には宮廷をマドリードに移転することで、スペインの新たな首都を確認しました。ほとんど政務に専念し、書類による統治を行ったため、彼は「書類王」と呼ばれることになります。彼が構築した官僚主義的な書類決裁システムは当時のヨーロッパで先進的でしたが、その後の統治者にはそのシステムを機能させることが難しかったとされています。

カトリック信仰の防衛者

フェリペ2世は、カトリック国家の統一を目指し、信念として「異端者に君臨するくらいなら命を100回失う方がまし」と語りました。1559年には禁書目録を公布し、いくつかの大学でスペイン人の学びを制限しました。また、カトリック同盟を支持し、フランスのユグノー戦争に介入します。彼は1571年のレパントの海戦で勝利し、ポルトガルを併合するなど、カトリックの盟主としての地位を確立しました。

帝国の頂点と衰退の兆し

1580年にはポルトガルを併合し、フェリペには広大な領土が加わり、「太陽の沈まぬ国」と称されるほどのスペインの全盛期を迎えますが、1588年のアルマダの海戦での敗北はスペインの衰退の兆しとされました。貴族位の売却や新税の導入が相次ぎ、財政は厳しい状況に至ります。

また、流行病の影響が続いたことで、フェリペ2世の死が近づく頃には「スペインの世紀」は終わりを告げることとなります。

結婚と家族

フェリペ2世は様々な結婚を通じて、政治的な同盟を結んできました。彼はポルトガル王女マリア・マヌエラ、イングランド女王メアリー1世、フランスのエリザベート・ド・ヴァロワ、オーストリア・ハプスブルク家のアナ・デ・アウストリアと結婚しました。これらの結婚は多くは政治的利益を目的として行われ、家庭的には恵まれない一生を送ったとされています。

逸話と後世への影響

フェリペ2世にまつわる逸話には、彼がサン・バルテルミの虐殺の報告を受けた際に初めて笑ったとされ、その後は生涯にわたり再び笑うことはなかったと言われています。彼の治世は、スペインが世界的な大国として栄光を極めた時代であり、しかし同時にその後の衰退の始まりを示した歴史的な時期でもあります。

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