禁書目録

禁書目録（Index Librorum Prohibitorum）とは

禁書目録（Index Librorum Prohibitorum）は、16世紀から20世紀半ばまでカトリック教会が作成していた、信徒に有害とみなされた書籍のリストです。この目録は、カトリックの教義や道徳に反すると判断された書籍から信徒を保護することを目的としていました。単に出版済みの書籍を対象とするだけでなく、信徒が著作物を出版する前に検閲を行うこともありました。

歴史

最初の禁書目録は1529年にネーデルラントで作成され、その後ヴェネツィアやパリでも同様のリストが作成されました。ローマで初めて作成されたのは1557年、教皇パウルス4世の時代です。トリエント公会議では、それまでの目録が厳格すぎ、個人的な意見で書籍が選択されているとの批判が起こりました。これを受けて、教皇ピウス4世は目録作成の方法を定め、1564年に規範となるべき禁書目録を作成しました。このトリエント版は、1897年まで同種の目録の規範となりました。

1571年には、禁書目録の作成・改訂を行う専門委員会が設置され、書籍の検定やピウス4世時代の目録の改訂が行われました。委員会は、問題のある書籍に対し、一部内容の修正を求めることもありました。修正を要する書籍は「要修正」「要一部削除」として別のリストに記載されました。目録は時代とともに長大化し、教皇庁の許可を得た書籍は検査が簡略化されました。禁書の最終決定権は教皇にあり、教皇には個人の著作全体を指定する権利もありました。1917年の教会法典施行により、禁書目録の改訂委員会は廃止され、著作の検定権能は教皇庁直轄となりました。

禁書目録は1948年版まで作成され、4000冊の書籍が掲載されました。これらの書籍は、反カトリック的、不道徳、性的放埒、政治的偏向、魔術など、様々な理由で危険視されました。ダンテ・アリギエーリ、デジデリウス・エラスムス、エドワード・ギボン、ジョルダーノ・ブルーノ、ヴォルテール、ニコラウス・コペルニクス、ガリレオ・ガリレイ、ジャン＝ポール・サルトルなど、多くの著名な人物の著作が禁書目録に掲載されました。18世紀から19世紀にかけては、カトリック教会が近代思想を拒絶したため、多くの近代哲学者の著作がリストに含まれることになりました。ルネ・デカルト、イマヌエル・カント、ジョージ・バークリーなどもその例です。

禁書目録はカトリック信徒の多い国で大きな影響力を持ち、出版物の流通が盛んな大都市を除き、禁書目録に掲載された書籍はあまり見られませんでした。禁書目録は1966年に公式に廃止されましたが、カトリック信仰を危うくする書籍を読むことは推奨されていません。1975年には禁書に関する条項が刷新され、1983年の新教会法典に明文化されています。

影響とその後

禁書目録は、思想や言論の自由に対する教会の姿勢を示すものとして、歴史的に重要な意味を持っています。現代においては、情報へのアクセスが容易になったため、禁書目録のような制度は存在しませんが、特定の情報に対するアクセス制限や検閲は、形を変えて存在し続けています。禁書目録の歴史を振り返ることは、情報と自由の関係について考える上で貴重な示唆を与えてくれます。

関連項目

禁書
異端審問
* 対抗宗教改革

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