フェルミガンマ線宇宙望遠鏡

フェルミガンマ線宇宙望遠鏡 (Fermi Gamma-ray Space Telescope)

フェルミガンマ線宇宙望遠鏡（以下、フェルミ望遠鏡）は、宇宙からのガンマ線を観測するために設計された天文衛星です。以前はGamma-ray Large Area Space Telescope (GLAST)という名称で知られていました。この望遠鏡は、大面積望遠鏡(LAT)とガンマ線バーストモニター(GBM)という二つの主要な観測装置を搭載しており、それぞれ異なるエネルギー範囲のガンマ線を捉えることができます。2008年6月11日にNASAによって打ち上げられ、同年8月から観測運用を開始しました。このプロジェクトは、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スウェーデンの政府機関や研究機関が共同で進めています。

観測ミッションと概要

フェルミ望遠鏡は、当初5年間のミッションとして計画されていましたが、2013年8月に延長ミッションに移行し、現在も観測を続けています。この間に1,200以上のガンマ線バーストと500回以上の太陽フレアを観測しており、宇宙における高エネルギー現象の研究に大きく貢献しています。

搭載観測装置

フェルミ望遠鏡には、以下の二つの主要な観測装置が搭載されています。

1. 大面積望遠鏡 (LAT):
- LATは、20 MeVから300 GeV以上のエネルギー範囲のガンマ線を検出・撮像する装置です。
- 全天の約20%を視野に捉え、掃天観測を行います。
- 活動銀河、超新星残骸、パルサーといった高エネルギーガンマ線天体を観測対象とするほか、暗黒物質、宇宙線、星間物質の研究にも利用されています。
- コンプトンガンマ線観測衛星に搭載されていたEGRETの後継機として、高エネルギーガンマ線観測をさらに精密に行います。

2. ガンマ線バーストモニター (GBM):
- GBMは、8 keVから30 MeVのエネルギー範囲で、ガンマ線バーストのような突発的な天体現象を観測します。
- 14個のシンチレーション検出器を搭載しており、地球上では観測が難しいエネルギー帯域のガンマ線を捉えることが可能です。
- 12個のヨウ化ナトリウム結晶検出器で8 keV〜1 MeVの範囲を、2個のビスマスゲルマニウム結晶検出器で150 keV〜30 MeVの範囲をカバーしています。

参加研究機関

フェルミ望遠鏡のプロジェクトには、世界中の多くの研究機関が参加しています。以下に主な研究機関をリストアップします。

LATに参加する主な研究機関

アメリカチーム:
スタンフォード大学 (物理学科, GLAST グループ & ハンセン実験物理研究所)
スタンフォード直線加速器センター (粒子天体物理グループ)
NASAゴダード宇宙飛行センター (高エネルギー天文学研究所)
合衆国海軍研究所 (高エネルギー宇宙環境部門)
オハイオ州立大学 (物理学科)
カリフォルニア大学サンタクルーズ校 (物理学科)
ソノマ州立大学 (天文＆物理学科)
ワシントン大学
テキサスA&M大学キングスビレッジ校
日本チーム:
東京大学
東京工業大学
宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究所
広島大学
早稲田大学
名古屋大学
茨城大学
ドイツチーム:
マックスプランク物理学研究所
マックス・プランク地球外物理学研究所
オーストリアチーム:
インスブルック大学
アイスランドチーム:
アイスランド大学
イタリアチーム:
国立核物理研究所 (INFN)
イタリア宇宙機関
Istituto di Fisica Cosmica, Milano, CNR
INFNとバーリ大学
INFNとパドヴァ大学
INFNとペルージャ大学
INFNとピサ大学
INFNとRome Tor Vergata大学
INFNとトリエステ大学
INFNとUdine大学
スペインチーム:
Institut de Ciències de l'Espai
フランスチーム:
Service d'Astrophysique, CEA DAPNIA, フランス原子力庁
フランス国立宇宙研究センター
Institut National de Physique Nucléaire et de Physique des Particules, IN2P3
Laboratoire Leprince-Ringuet de エコール・ポリテクニーク
Centre d'Études nucléaires de Bordeaux Gradignanボルドー大学
Laboratoire de Physique Théorique et Astroparticules, モンテペルリエ第2大学
スウェーデンチーム:
王立工科大学
ストックホルム大学

外部リンク

NASA website for GLAST
GLAST Mission Profile by NASA's Solar System Exploration
Stanford University GLAST website (LAT)
Sonoma State University GLAST website
NASA Education and Public Outreach Group at Sonoma State University
GBM website at Marshall Space Flight Center
GLAST public outreach and education website
GLAST Science Support Center
広島大学 日本フェルミ衛星LATチーム
"GLAST into space" article in symmetry magazine
"Window on the Extreme Universe" article in Scientific American, Dec. 2007 issue
JAXAなど、宇宙線陽子が超新星残骸から生成されることを確認(2013年2月15日 マイナビニュース)

フェルミ望遠鏡は、これらの研究機関の協力によって、宇宙における高エネルギー現象の解明に大きく貢献しています。

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